表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私のシャドウ  作者: あご
12/17

本当の友達

ピーンポーン。

えまとシャドウは帰りがけに買ったケーキをもって工藤ゆきの部屋の前に立った。


「ごめん下さい、今日からお隣に引っ越してきたものです。」


そうえまが言うと、ガチャ、と玄関が開いた。


「こんにちは、工藤さん。」えまは、私服に着替えた工藤ゆきにそう言った。


「ケーキ持ってきたんだ。これ、どうぞ。」


シャドウは工藤ゆきにケーキが入っている箱を渡した。


「・・どうも」


工藤ゆきは小さな声で言った。


「あの、さっきはしつこくついて行っちゃってごめんね。」


えまは、工藤ゆきに深々と謝った。


「でも、私、工藤さんと仲良くなりたいの。おちょくりとかそんなの一ミリも思ってない。私、本気だから!」えまは必死になげかけた。


「ダメだよ。あなたもわかってるでしょ?私と関わったら、次はあなたたちがターゲットにされるかもよ。」工藤ゆきは、少し震えた声でそう言い、戸を閉めようとした。


その戸の取っ手をえまは、握り自分の方にひいて、


「そんなのどうだっていいの。私は工藤さん、いやゆきちゃんと仲良くなりたい!」えまは本心をさらけ出した。確かに最初は仕事で仲良くなろうと思っていたが、どうしても工藤ゆきと仲良くなりたいと思ったのだ。

工藤ゆきは、そんなえまの顔を見て、少し表情を緩めたように見えた。そして、


「そんな必死に私の事思ってくれる人なんて初めて見た。」工藤ゆきは、えまを見た。

「ありがとう。」工藤ゆきの口からそうこぼれた。


「これで、友達になれたね。」シャドウは工藤ゆきとえまの手を取り、固く握手させた。えまとシャドウは工藤ゆきに微笑みかけた。すると工藤ゆきが初めて笑顔を向けた。


「そうだ、ケーキ一緒に食べようよ。二人暮らしだから、良かったらうちの家、来ない?」シャドウは二人に提案した。


「私、お母さんが遅くまで帰ってこないから大丈夫だけど・・」


「じゃあ、決まり!引っ越してきたばかりだから何もないけどどうぞ。」えまは、満面の笑みを浮かべてそう言った。その表情をシャドウはどこか安心したように見ていた。



 三人はシャドウたちの家に移動し、仲良くケーキを食べていた。

「改めて、私は影山えま。で、こっちが葵。」えまは自己紹介をした。


「私は、工藤ゆき。よろしく。」工藤ゆきは小さな声でそう言った。


「えまはね、こう見えても気にしてるんだよね。」


「へ?何が?」


えまはシャドウの方を向いた。


「えま、今太ったでしょ。前よりも」えまは眉間にしわを寄せてシャドウの肩を叩いた。


「痛いよ。」シャドウは右肩をおさえた。


「もう。人の体系のことべらべら喋らないで!」


えまはプイっとそっぽを向いた。



「いいじゃん。俺たち双子の中じゃん。そんなに怒らなくても。」シャドウはえまをなだめた。

すると工藤ゆきは「ふふ。」と笑った。

えまとシャドウは工藤ゆきの方を向いた。「ゆきちゃんが笑った。」えまは嬉しくなって工藤ゆきの手を取った。


「友達。初めてできた。」


工藤ゆきは照れたように目をそらしそう言った。


「嬉しい。じゃあ私たち、友達第一号ね。」


えまはシャドウとうなずきあった。


「話すよ。今のクラスでの私の事。」


工藤ゆきはえまの目をそっとみた。「え?ほんと?」でもえまはきっとそんな事を人に話したくないかもなと思った。

少なくとも、自分が友達ができなかったことを誰にも相談できなかったみたいに工藤ゆきならなおさらそう思っているかもしれないと思ったのだ。


「ゆきちゃん本当にいいの?嫌だと思っているんだったら話さなくてもいいからね。」


えまは優しくそう言った。


「話すのは怖いよ。でもね。これからえまちゃんと葵くんとは友達として付き合っていきたいから、話しておきたい。」えまは工藤ゆきのその目を見て何かを覚悟した顔に見えた。だからえまはうなづいて

「苦しいかもしれないけれど、どうしてゆきちゃんはいじめられてしまったのか教えてくれる?」とそう言った。

「うん。」工藤ゆきは落ち着いて話し出した。


「私、小さなころから人見知りで、あまりクラスに馴染めていなかったの。それから、このクラスになって一人で毎日過ごしていたら、嫌がらせを受けるようになって。」工藤ゆきの声はだんだん小さくか細くなった。

「だからね、広瀬先生に相談したの。でも、広瀬先生にチクったことがクラスにバレて今度はクラスのスクールカーストの上位者を中心にイジメられるようになった。今日のお弁当も誰かがやったんだと思う。」


「そっか・・。苦しかったね。でも、もう一人じゃないよ。私も、葵もいるもん。ね!」


えまは、工藤ゆきの肩をもって明るく言った。


「私もね、つい最近まで、学校でずっと一人だったんだ。毎日がものすごく苦しかった。でもね、ある人が私を変えてくれたの。だから、次は私が支える番。だから、一緒に頑張ろう!」


えまがそう言うと「ありがとう。」と工藤ゆきは静かに泣き始めた。

そんな工藤ゆきをえまは、抱きしめて「大丈夫、大丈夫」と言った。そんな二人をシャドウは、優しく見守った。

しばらくたつとガチャ外から戸を開ける音がした。


「もしかしたらお母さんかもしれない。」工藤ゆきは立ち上がり、玄関の外へ出た。


「お母さん、おかえり」


「あら、ゆき、こんなところで何してたの?」えまとシャドウも外に出て、


「こんばんは。隣に越してきた影山です。」シャドウがドアからちょこっと顔を出して言った。


「ゆきちゃんとは同じクラスメイトなんです。今日、引っ越してきました。よろしくお願いします。」


「あら、そうなの。よろしくお願いします。あっそうだ、親御さんにも挨拶をしなきゃね。」


「ごめんなさい、色々事情があって今は、えまと俺で二人暮らしなんです。」


「大変ね、何かあったら言ってね。」工藤ゆきのお母さんは優しい笑顔を向けた。


「ありがとうございます。」えまとシャドウはぺこりとお辞儀をした。

「じゃあ、私、そろそろお暇するね、今日はありがとう。」工藤ゆきはニコッと笑った。「うん、こちらこそ。また明日ね。」えまとシャドウは大きく手を振った。二人が部屋に戻ると「さあ、俺たちも入ろう、寒いし、寒い。」シャドウは足早に部屋へと戻った。


「今日は、えま、大活躍だったね。俺助かったよ。」


えまは、「私の大活躍ね!」自信ありげに言った。


「でもね、ゆきちゃんに言ったことはすべてほんとだよ。」


「えまも成長したね。」シャドウは、どこか嬉しそうに言った。えまは、照れ笑いし、


「やめてよ、シャドウらしくない」と笑いながら言った。

 


深夜0時、えまが布団で寝てることを確認して、シャドウはこっそりとベランダに出た。そしてポケットから透明のビー玉を出した。そのビー玉を満月と重なり合わせて


「親父。」と呼びかけた。


「坊主か」声といっしょに神様の顔がビー玉に映り込んだ。


「仕事は順調か?」神様はシャドウにそう語りかけた。


「うん、えまのおかげでね。」シャドウは無表情だ。


「お前が、連絡してくるなんて、珍しいな。何か迷っているのかい?」神様は優しい顔をした。


「昔の記憶が残ってるとさ、苦しいって思うこともあるんだね。」シャドウは夜空を見ながら何か考えふけていた。

 



工藤ゆきが亡くなる六日前。冬晴れの青空のもと学校へ行く準備にえまとシャドウは追われていた。


「えま早く!遅れちゃうよ!」シャドウが、えまをせかす。


「ごめんごめん」えまは急いで洗面台から出てきた。


「これだから女子は。昨日と何も変わってないのにさ。」


「こらっ。そんなこと女子に言っちゃいけないの!」えまは、シャドウに怒った。


「ごめんごめん。」シャドウは小さな声で謝った。もう!と言いえまが家の鍵を閉めると、ガチャンと扉が開く音がした。


「あ!ゆきちゃんおはよう!」「一緒に学校行こう!」えまとシャドウが元気よく言った。


「おはよう、うん一緒に学校行こう。」工藤ゆきも賛同した。

 


学校につき上履きに履き替える時だった。工藤ゆきが上履きを履き替えようとすると「イタッ。」靴のなっかには、画鋲が入っていた。


「え?大丈夫?」えまが心配そうに工藤ゆきの足を見た。「あ!血が出てる!」「保健室によって行こう!」シャドウとえまが工藤ゆきを支えた。「ごめん、迷惑かけちゃって。」工藤ゆきは申し訳なさそうな顔をして謝った。「そんな顔しないで。負けちゃだめだよ!私たちがいるから大丈夫!」えまは力強く言った。

「昨日と言い今日と言い、犯人、どんだけ画鋲好きなんだよ。」シャドウは両手を上げて、困ったようなしぐさをした。「うふふ、ほんとね。」そんなシャドウを見て工藤ゆきは小さく笑った。

「さあ、保健室へ行こう。」えまとシャドウは工藤ゆきをささえなおし、保健室へと向かった。

 


そんななか、その様子を靴箱の影から見ていた二年F組の男女数人の生徒たちがいた。

「なんなんだよ、あの転校生。」野々村が、あきれたように言った。

「ムカつくな、ほんと」雪村が、えまたちの方へ目をやり鼻で笑った。

「もう、あいつら二人もやっちゃおうぜ。」遠藤がこそっと呟いた。


「そうね。あの二人にも地獄を見てもらわなくちゃ」小野はにやりと不気味な笑顔をうかべた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ