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婚活ファイル3,「ギルドからの紹介」



「おいオヤジ、なんだよコレ、いつからうちの離れでこんな商売を始めやがったんだ!?」


 冒険者ギルドの他に、商人ギルド、各神の教会など色々な場所にポスターを貼らせてもらった結果、その連絡先が自分の家になっている事にびっくりしたガンスさんが慌てて家に帰って来た。


「おうドラ息子、久しぶりだなぁ・・・しばらく面を見せなかったじゃねぇか、こいつはマモルって言ってな、今から新しい商売を始めるってんで、離れを貸してやってるんだよ!」

「おうマモル、コイツが息子のガンスなんだが・・・この通り不細工だがなんとかなりそうか?」


 そう言われて紹介されたのは30歳にしてはちょっと老け気味の、がっしりした体躯の男性だった。確かに言われて見ればバリーさんと似ている部分もあるかもしれないが、まあ確かにハンサムとは言い難い顔をしている。

 自分でもそれを気にしているのか、表情も険しく、何だか怒っているように見えて怖い。


「何だよ、不細工で悪かったな」

「マモルはな、今度結婚相談所ってェ商売を始めるんだってよ、だからな、この際お前の相手も見つけておらおうかと思ってな。どうせお前、自分では嫁さんとか探そうともしてないだろ?」

「あ゛? うるせぇな、どうせ口説いた所で嫌な顔して逃げられるんだから、無駄だろそんな事、俺はこのまま冒険者として生きて一人で死ぬんだ、どうせ俺なんて・・・」


 あらあら、相当心の傷は深いみたいだなぁ・・・


「まあ聞け(せがれ)、マモルはな、結婚を纏めるプロなんだとよ。だからもしかしたら何とかなるかも知んねぇ。もし・・・・もしもだぞ?お前と結婚してこの店を継いでもいいって女が現れたらどうする?」


 バリーさんからそう言われ、ガンスさんは一瞬口ごもる。

「そりゃ・・・そんな女がいればよ・・・俺だって・・・」とか言ってる所を見ると、本当は嫁さんが欲しいんじゃあないだろうか?


「よし、言ったな?、って訳だマモル!何とかコイツにピッタリな嫁さんを世話してやってくれよ、もし結婚まで行ったなら、成婚料は弾むぜ!!」


 バリーさんにそう言って背中を「バンッ!」っと叩かれた僕は、取りあえずガンスさんから話を聞く事にした。



◇ ◇ ◇ ◇

_________________



「それじゃあガンスさんのプロフィールを作成しましょう」


 まず名前と性別、年齢は30歳・・と。


「あとは職業を詳しく、大体でいいので年収もお願いします」


「職業? そりゃ冒険者で・・・まあ戦士って言えばいいのか?魔獣なんかが出たら戦う役目だ、年収なんて分かんねぇよ、レアなアイテムが手に入って大儲けな時もあるし、外れの場合は全く儲からない時もある」


(これなんだよなぁ、今まで登録してもらった冒険者にもトレジャーハンター系の活動をしている人は何人かいて、その人たちの収入は不安定にも程があるレベルなのだ、正直結婚には向かない)


 まあでもガンスさんの場合は辞めて小間物屋を継ぐという選択肢もある。元の世界で言えば「実家が太い」という奴だ、これはプラス評価になるぞ。


「逆にお相手の女性に望む事はありますか? 例えば年齢は何歳くらい年上までならOKとか、共働き希望とか?」

「あ? そんなの結婚してくれるならそれだけでいいよ。年なんて種族によっては100歳単位で違うだろ? でもまあ人間なら35位かなぁ?、結婚すんなら出来れば子供は欲しいし」


 うん、年齢についても元の世界だと人間しか居なかったけど、この世界だと長命種ってのが居るからなぁ。その場合実年齢が高くても子供が産めるから、ぶっちゃけ「見た目が若けりゃいい」になるんだよな、エルフとか見た目20代でも実年齢200歳とかザラに居て、それで全く問題無いし。

 元の世界のあのアラフォー女性達も、長命種だったら問題無かったんだけどねぇ・・・


「それじゃあお相手の条件は、年齢はまあ大体人間でいう30代半ばくらいだけど異種族なら何百歳年上でもOK、外見に対しても注文無し、収入も不問・・・っと」


 凄い・・・もうコレ子供産める女性なら誰でもOKみたいな感じだな。こんなの元の世界の相談所でもかなり緩い条件だし・・・これなら何とかなるかもしれない・・・


 僕はそう思い、次の日から冒険者の女性を中心にお見合いをセッティングしようと動き始めるのだが、なかなかそうはうまく行かないのであった。



◇ ◇ ◇ ◇

__________________




「ああ、知ってるよ、ガンスだろ?あの不細工な・・・何、あいつ嫁探ししてんの?」


 最初は同じ様な冒険者同士なら、お互い年収などの縛りが無いからいいかと思ったんだけど、現役冒険者はまだ結婚を考えていない人が多く、収入などの条件を付けない人は異性を何で見るかと言えば「外見」なので、ここでガンスさんの特徴である「不細工」というのがマイナスになる。


 それと冒険者の場合大抵は何人かで「パーティー」を組んでいる事が多くて、よそのパーティーの女(男)に声を掛けるのは揉め事の原因になると言うのもあるみたいだった。


 そして教会に集まるような真面目な女性の場合、ガンスさんの職業、「冒険者」というのがネックになる。


 つまりガンスさんの相手を探す場合は、とにかく男性の「見た目については不問」というのが第一条件、その上で冒険者という不安定で危険な職業も許容してくれる人じゃ無いといけない訳だ。


「う~ん、先にガンスさんが冒険者を辞めて小間物屋を継いでくれたら『小間物屋の店主で安定収入があります』って事で一般女性に需要があると思うんだけど、一般女性はそれこそおせっかいオバサンの紹介で若いうちに結婚しているので30代まで独身の人が少ないんだよな」


 それでもマモルは諦めずに、とにかく冒険者ギルドを中心にガンスさんでもOKという女性を探し続けた、その結果ギルド職員の女性から、この方の()()になってくれる人なら募集中なのですけど、ちょっと違いますかね?という紹介を受けた。


 早速面談してみると、その女性は確かに「人間の男性の見た目にこだわりが無く、冒険者でもOKであり、他のパーティーに所属している訳でもなく、子供も作りたい」という完全にガンスさんの条件に一致していた。しかもおまけにかなりの美女だ・・ただ一点の問題を除けば。


 僕はその夜ガンスさんに再び面談して、その女性と一度会ってみませんかと言ってみた、ガンスさんは驚いていたが、僕は最後に彼女の唯一の問題点を明かす。


「その女性なんですけど・・・・人間じゃなくて所謂(いわゆる)『魔物』なんですけど大丈夫ですかね?」と。



◇ ◇ ◇ ◇

________________



 ギルド職員から紹介されたその女性は「テュポーネ」という名前だった。

 身長は一般の女性よりも高く、かなりの美女だ。


 以前はパーティーを組んで冒険者をしていたらしいが魔獣に襲われ、彼女を除いてパーティーが全滅し、一人残されたらしい。

 その際彼女の主人であった魔獣使いも死亡し、現在はギルド預かりという事で、ギルドの管理下で暮らしているのだとか。


 彼女は魔法も使えるが戦闘力はあまり高くなく、どちらかというと大人しい性格なのだが、彼女を仲間にと望む場合は戦闘力を期待される場合が多く、戦力にならないならと引き取り手が居ないそうなのだ。


 実際面談してみたけど意思の疎通もしっかりできるし「子供を産んで育てたい」という希望を持っている。婚活条件で言えば「専業主婦希望」ってところだな。

 うん、ただ一つの問題点を除けば引く手数多なのだろうが、その問題点というのが、彼女の下半身は蛇のそれなのである。


 種族名「ラミア」


 上半身が人間、下半身が蛇という魔物。女性個体しか生まれず、人間の男性と交わって子供を作る。

 身体能力が高く、魔法も操り、知性も高い。

 人間の男性を誘惑する為か、その上半身は美女である事が多い。

 虜にした男性の生き血を吸うと言われているが、吸血鬼のように吸血で仲間を増やしたり対象を奴隷化する様な能力は無く、単なる食事の一環として生き血を飲むようである。


 以上が種族としてのラミアのスペックである。


 うん、僕も今まで長年結婚相談所の職員をやって来たけど、年収や年齢などのスペックの所に「種族・ラミア」とか「吸血癖アリ」とか書きこんだのは初めてだなぁ・・・


 ともかく彼女は今までその魔獣使いの女性が主人として責任を持つと言う事で町に住んでいたが、基本的にエルフやドワーフの様な亜人までなら大丈夫なのだが、ラミアとなると完全に魔物となる為、どんなに大人しくて害が無くても、責任を持つ主人が居ないと町で暮らすことは出来ないそうなのだ。

 それで彼女の()()になる人を探していると・・・


 確かに結婚すると旦那さんの事を「○○さんのご主人」とか言ったりするけどさ、これ、どうなのよ?


 それでもテュポーネさんは話した感じは物腰も丁寧で、普通に気立てのいい女性だった。

 ただ魔物だけど。


 って事でガンスさんに会うかどうかの確認を取ってみると、ガンスさんはそれを聞いて物凄く悩み始めた。


「確かにラミア連れの冒険者パーティーが居たのは憶えてるよ、遠目に見た事もあるかもしれない。実際マモルが話して見てそう思ったって事なら、普通に話も出来る穏やかな女性なんだろうな・・・でも魔物・・・・魔物かぁ・・・・」


「別に会ったら絶対に結婚という訳では無いんですから、取りあえず食事でもしてみるのはどうでしょう?」

「確かに、会うだけならタダだしな。それに相手が魔物ならフラれた所で未練も無いだろうし、そこまで言うなら一度会ってみるか」

(ああ、ガンスさん的には、もう上手く行くっていうヴィジョンが最初から無いんだな・・・)


 確かにこう言う感じの思考パターンになってしまっている男性は元の世界にも居た。

 別にそんなに感じが悪い人じゃないのに、女性相手となると成功体験の無さからか、急に自信が無くなってしまうタイプの人。


 そういう人って、自信の無さが態度に現れちゃうから、余計女性から敬遠されてしまったりするんだよなぁ・・・


 僕は一抹の不安を抱きながら、ガンスさんとテュポーネさんのお見合いをセッティングする事にしたのだった。



____________つづく。


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