行為主体
戦時国際法における捕虜だ何だという話がある。そして、自衛官は捕虜に該当しないという話がされたりしているのだが、実はそんな事は無い。
戦時国際法における交戦者、あるいは交戦団体を定義するための交戦者資格という規定が存在しているが、
1・指揮官としての責任者がいる事
2・遠くからでもわかりやすい特殊記章を付ける事
3・武器を隠さず携行する事
4・行動には戦争法規・慣例を順守する事
・この権利・義務は正規軍だけでなく民兵及び義勇兵団にも適用する。
と、ジュネーブ陸戦条約に定められていて、元々交戦者、交戦団体は正規軍のみを指すのではない。
という事なので、「その他の戦力」を放棄している筈の日本が自衛隊を持つなどと言う事は9条に違反しているのは明白な訳だ。
コーセンなる言葉にアナフィラキシーショックを引き起こす癇癪持ちへの配慮から、昨今では「行為主体」という訳し方をしているらしい。
この行為主体は先に挙げた通り、民兵や義勇兵団にも適用される。
つまるところ、国の軍隊であるかないかは関係なく、武装集団であれば、上記を満たせば「行為主体」と認められる。
イスラム国やワグネル、ブラックウォーターでもね。
そして、それらを国が管理、統制するには、当然ながら戦争法規が必要になるし、戦争犯罪裁判所が無いといけない。
必死になって「ジエーは13ジョーの生存権だから9条改悪は不要だ!」と言っても、「その他の戦力」を持たず、「交戦権を放棄」する以上、捕虜の取り扱いや戦争犯罪規定を法制化するのは違憲だよ?
捕虜取り扱い法規があるから日本は大丈夫とか言ってるけれど、それ、誰がどう捕虜虐待の時に捜査や審理すんだろうね?
捕虜虐待を刑法で~って?捕虜虐待は戦争犯罪なので、戦争法規の定めに則らないといけない。変な事をすれば国際裁判所が出て来るよ?
それって、どうなの?
HOSにすれば目の敵でもある小沢一郎シンパである伊勢崎賢治がもう15年くらい主張しているように、戦争犯罪というのは、何も国内で起きるとは限らない。
現に今もジブチに自衛隊が居る。そこでナニカあった場合、誰がどんな権限でどうやってジブチで捜査するの?地位協定に基づくと、捜査権や裁判権は普通は派遣国にある訳で、当然自衛官の裁判権は日本にあることになるが、さて、刑法や警職法は適用できるのだろうか?
今現在、すでに問題がそこにあるのに見ようとしていない。それなのに、憲法13条で自衛隊は合憲です?生存権に基づく行為なので合法です?
イヤイヤ・・・・・・
さらに、テキキチコーゲキなる論を盛んに叫ぶ人たちが存在するが、その敵基地とはドコなの?
この敵基地が日本の施政権の範囲内にあるならば、「自衛隊は国内法で動くのだから、憲法9条で禁じる戦争法規なんか不要だ」が通用するが、北朝鮮や中国、ロシアの領土にあるなら、日本の法律は適用外である。
こう書くと、兆候を確認して撃つなら合法だ。反撃なのだから敵基地破壊の何が悪いと言いだすだろうが、その敵基地は住宅地から離れていて絶対に誤爆や跳弾の類は発生しないんだよね?
ウクライナが迎撃をミスってポーランドに対空ミサイルが着弾し死傷者を出す事故を起こしている。
もし、日本が同じことをやって台湾や韓国に着弾したら「国内法」かい?
意図かどうかはともかく、ロシアの限らず誤認や誤爆の類は枚挙にいとまがない。コソボ紛争の際に行われたベオグラード空襲ではセルビア軍・政府施設と間違って中国大使館を誤爆しているし、アフガンやイラクではドローンによる誤爆がさんざっぱら起きていた。
それを考えればロシアによる攻撃もすべてがすべて故意にウクライナの民間施設を狙っているとは言い難い。
さて、そこで考えてみようか。
北朝鮮は鉄道発射型ミサイルを持っている。何処から発射するか分からんし、それは市街地近郊かもしれない。
誤認して駅に停まったダミーを攻撃したら?トマホークだって百発百中じゃない訳だから、飛び越えて市街地に着弾したら?
中国やロシアの空軍基地や港湾を狙う場合は軍民共用であるとか民家が隣接していることもしばしばなので、民間施設への誤爆のリスクは尚更高い。
テキキチコーゲキだの反撃だのと叫びなあがら、全くもって戦争法規に無関心で、誤爆や誤認が戦争犯罪に当たる可能性に無頓着過ぎないだろうか?
先日、南日本新聞のネット記事タイトルに「改憲派は平和ボケ」とあったが、マサにそうではないだろうか。
戦争法規と戦争犯罪裁判所なしに交戦行為を叫ぶ事ほど平和ボケした行為は無い。
憲法改正と言っても、「自衛隊」を明記しても戦争法規や戦争犯罪裁判所には結びつかない。わずか数年後に台湾進攻が起きるかもしれないと言っているのに、何段もある階段を一歩一歩登るなどと悠長なことを言っていて間に合うんだろうか?
当然だが、公海上で船の撃沈や航空機の撃墜も起きる訳だが、それも「国内法」で?
これに関してもイラン旅客機撃墜事件というのが起きている。ペルシャ湾で米イージス艦が旅客機を撃墜した奴だ。まあ、それより新しいイランでの撃墜事件も起きているが。
どちらも無線や機材の故障や誤認に起因している。それが誤認であるか意図的な戦争犯罪であるかを誰がどう捜査し審理するのだろうか?しかも、公海上で起きた事件を。
これね、すべて繋がってるわけよ、文民トーセー、ネガティブリスト、戦争犯罪とね。
戦争犯罪か否かを誰がどう捜査するのか、審理するのかという権限の問題は政治が解決策を出さなきゃダメだし、ネガティブリストを成立させるには政治の権限明確化が必要になる。自衛官ではなく政治のね?
その、政治の権限を明確化するには、文民トーセーにおける権限の種類とその責任の所在の明文化が必要になる。
9条変えれば解決するほど簡単な問題ですらないんだコレ。だから、9条を段階踏んで云々などと悠長な話はやってられない。
戦争犯罪か否かを捜査しようとしても、まずはその行為(攻撃)がどういった権限で行われたか不明確では調べ様がない。
政治が戦争法規についての知識を有し、戦争権限を明文化した形で有しているかどうかが分からないのに、行為(攻撃)の責任を問う事が出来ない。「昔よくあった先制攻撃だから」や「戦略攻撃でしょ?」と、今の国際法を理解せずに違法行為を放言されても困る訳よ。
何でこんなことを言ってるかというと、現在のウクライナの状況というのが、双方航空優勢を取れない原因が、昔でいう航空撃滅戦にロシアが失敗し、ウクライナにはその能力がないから。
双方とも敵の対空ミサイルを制圧できておらず、自由に空が飛べない事で、昔ながらの血なまぐさい地上戦を続けるしかなくなっている。
これは米軍が本格介入して中国の対空ミサイル網を制圧しない限り台湾有事でも再現され、その射程内に尖閣諸島や与那国島が入る事はほぼ確実。中華イージス艦にも現状で射程200kmの対空ミサイルがあるから、場合によっては石垣、宮古も射程圏内。
そして、以前書いたようにプーチンがウクライナとの戦争状態を戦争と認めてしまった場合、樺太や国後に配備される可能性がある射程400kmの地対空ミサイルは札幌まで射程圏内となる。
日本は否が応でもテキキチコーゲキせんと、自国の空も自由に飛べんのよ。その時には。
その為には、政府が自衛隊を「行為主体」と明言し、ちゃんと戦争法規を整備して戦争犯罪裁判所を設けて誤爆や誤認に対応できる体制が無ければ、中国やロシアから一方的に「戦争犯罪行為」を訴えられた場合、対応の取りようがないという、とんでもなくあり得ない事態が待っている。
そうそう、福島第一発電所への放水の際、時の防衛大臣が「統幕長が決断した」などと文民トーセー無視を放言していたが、誰かちゃんと指摘した?
あんな先例出来ちゃったから、いつでも「統帥の独立」可能なんよ?
戦前ウンヌンというフレーズが飛び交うが、確かに、民主党政権において「統帥の独立」を認めるかのような発言が行われたのだから、確かに今は戦前で間違いない。この状態を正すには、戦争法規に関する政治の権限と責任を明確化していかないと、正常化は無理だからね?
まあ、それが分かっている人がどれだけ居るかって、考えたくもないね。