ウクライナは実験場ですbyラインメタル
ラインメタルが試作戦車KF51「パンター」を1年半そこらでウクライナへと引渡す用意があるという話をしていると報道されている。
何だろうか?これ。
まあ、実戦場ほど都合の良い試験はないし、ウクライナとすればとにかく何でもいいから戦力になるなら欲しいんだろう。
まるで戦時中の兵器開発を彷彿とさせる話で、平時の感覚でそれを見るとちょっと呆れかえる面も存在している。
ヤフーニュースのコメント欄を見ても、「パンター」が如何なる車両かをまるで把握できていない応援団が多数存在し、「政府は許可しないだろう」と言った常識的な話や「試験場化著しい」といった批判が下げ評価をドンドン貯めている。
だが、そう言った意見への返信や評価というのは、レオパルトであるとかエイブラムズであるとか、あるいはブラッドレーの様な「枯れた車両」を前提に話をしている。
だが、「パンター」はそんな枯れた車両などではない。
そして、片やロシア兵器については散々な書き方をしているのを喜々として受け入れている。
とんでもなく自己の思考が行われていないんだろうなとしか思えないんだが。
そのロシア兵器の話でいえば、新型ステルス機のSu57がほとんど使われていないだとか、T14が撃破が怖くて戦場で出て来ないだとかいう話を喜々として信じ込んでいる。
では、米国はどうなんだろうか?
実戦配備してすぐのイラク戦争にF22が出撃したっけ?F35を最初に実戦投入したのも米軍ではなくイスラエル軍だった。
米軍だってこのように新兵器の投入には慎重なんだが?
それを全く語らずにただのロシア嘲笑ばかりやっているという異常な状態には閉口しかない。
そして、件の「パンター」についてだが、これが試作車そのままの仕様をベースとするなら、未だどこも採用していない130ミリ滑腔砲を装備した車両として引渡されることになるのだろう。
だが、この砲はどの様な仕様で、どの程度の弾薬供給が可能か、ハッキリ分かっている訳ではない。あくまでラインメタルの言い分を信じるほかない。
砲自体の開発はそれ相応の時間をかけてやっているのだが、採用例がない以上、供給が言うほど簡単に進む保証などどこにもない。
そして、砲弾など、レオパルトも供給するとなれば120ミリ砲弾の増産も必要になるのに、新規で130ミリ砲弾の量産まで並行してできるのであろうか?
ここでもし、引き渡し車両が120ミリ砲仕様だというならば、わざわざ信頼性未知数の車両を引き渡すのは単なるコマーシャル以外の意味がない事になる。「そんな余裕があるならレオ2の整備と引き渡しをもっとやれ」という話で終わってしまう。
コメント氏はそこまでちゃんと考察してコメントし、評価を下しているのであろうか?
先の否定的なコメントというのは、まさに「そんな余裕あるならレオ2が先だろ?」と言っている訳で、コメントへの否定的な返信や評価をしている側と意見の相違がある訳ではないはずなんだが?
どうにも短絡的な人が多すぎて、全く配信記事の内容が理解できていないんじゃなかろうか。
それに、最近もNATO演習に参加したドイツ軍ご自慢の歩兵戦闘車「プーマ」が全車故障で演習不参加という大失態を演じたばかりではないか?
そんなお国の最新兵器がマトモな整備がおぼつかない最前線で救世主になるとでも?
ロシア兵がT14をお荷物だと思っていると嘲笑するなら、それは当然、ウクライナに信頼性未知数の試乗車渡さずにレオを渡せというのが常識的な考えになりはしないか?
なぜか、ロシア兵器はポンコツで、つい最近失態があったドイツ兵器は信頼できる救世主といった、とんでもなく偏った色眼鏡で物事を見ようとしているのだとしたら、それはあまりにも間違った考えだと言わざるを得ない。
とてもではないが、そんな判官びいきだけでウクライナの応援をする軽薄な傍観者には全く共感が出来ない。
そもそも、ウクライナを支援してプーチンを倒せば世界は平和になるとかいうトンデモない楽観論からして、「頭大丈夫ですか?」という疑念しか沸いて来ない。
プーチンさえ倒せばって、成功例は第二次大戦の日本とドイツしかない無いんやで?
アフガンはタリバンが返り咲いたし、リビアもイラクも独裁者を倒してより酷い内戦や分裂しか引き起こされていない。シリアに至ってはアサドを引きずり下ろせずにただ流血が続いているだけ。
一体何を見て「プーチンさえ倒せば」なんて言ってるのかも理解不能としか言えない。
プーチン倒しても、より強硬派が政権を握るだけで何の解決にもならないという未来しかないのだが?
ウクライナのEUやNATOへの加盟に関しても、正直、あり得ない。
ロシアシンパ云々という思考停止でしか物事を考えられない人たちには全く見えないのだろうが、NATOに北欧が入れずに困っているのは地勢的に必要だからと、火種を抱え宗教の異なるトルコを早々に加えていたからでしょ?
たしかに、必要な措置ではあった。しかし、それがすべて良かった訳ではなく、こうして問題も内包している。
EUだってギリシアというお荷物が居た事で大騒ぎになったのは記憶に新しい。
ウクライナって、その両方を持ち合わせた国だって事を理解していれば、ホイホイと経済的にも安全保障的にも仲間に迎え入れることが難しい国だと分かるだろう。
ラインメタルとしては、これ以上韓国の戦車や装甲車が欧州で売れては困るから必死なんだろう。レオパルトのユーザーが乗り替えられては困るという危機感から、「こんなに迅速な対応が出来ます!」とセールスしたくなる気持ちは分かるが、日本でその報道に接して、ラインメタルのセールストークを鵜呑みにして妄信してる姿は、さすがにどうなんだ?