気球の撃墜の話をしてるけど、根本の話を皆で避けるのなんでぇ?
米国での気球撃墜について橋下氏が「破壊措置命令」の話をしていた。
だが、ちょっと待ってほしい。なぜ、それで撃墜できると?ちょっと何を言っているのか分からない。
まず、破壊措置命令というのは、飛来する飛翔体が日本に落下し、人命や財産に被害が出る恐れがある場合に破壊できるという内容になっているので、気球が飛んでいるだけではそもそも掠りもしない法律という事になる。
そもそもの話し、空の上というのは飛行するためにはそれぞれ管轄する航空局の許可を得る必要がある。飛行経路などを示して許可を得て初めて飛行が可能となるので、無許可で侵入する場合には国際法で撃墜も認められているほど厳しい対抗措置を取れることになっている。
で、この気球は何か許可を得たり告知がなされていたのだろうか?
それが無いなら、撃墜する事に何の問題もない。そもそも、無許可で領空を侵犯する行為が撃墜に値するんだから。
ただ、だからと言って自衛隊が勝手に撃墜して良い訳ではないし、撃墜する場合の法的根拠は破壊措置命令でもない。
領空侵犯に関して定義しているのは自衛隊法84条なのだが、そこには退去勧告か強制着陸しか明文化されておらず、撃墜に関する規定がない。
そのため、破壊措置命令同様に人命や財産への危険がともうなう場合の正当防衛としての撃墜は認められるとの見解は度々表明されているが、よく考えてもらいたい。
例えば、2012年12月に今でいう中国海警の飛行機が尖閣諸島を領空侵犯した事例がある。そして、船からドローンを上げる事も想定され、巡視船へのドローンジャマ―の配備などと言う話もあるが、残念ながら、それでどうにかなるのは無線誘導された民生ドローンに限られる。衛星通信や自立飛行する場合の対処法は無い。
まさか、巡視船に対空ミサイルを積んだり、射撃管制装置を搭載して機関砲で撃墜するのだろうか?
だが、その様な「もしも」は全く公に検討されたことが無い。
そして、同じく2012年には東シナ海で中国の無人偵察機らしき機影も確認されている。
そうした事がいくつも起こったにも拘らず、「撃墜」に関する議論は一度もなされることなく、「撃墜規定の在り方」は未だに誰も論じようとしない。
こんな状況なので、もし、尖閣のような無人島上空を他国のドローンや飛行機が飛び続けて自衛隊や海保の指示に従わなくとも、じつは手も足も出ない。「人命や財産への危険」が無ければ正当防衛が成立しないからね?
「撃墜」に必要なのは、「法律違反に対する執行措置」であって、正当防衛じゃないから。
言ってしまえば、橋下氏の破壊措置命令ウンヌンも、領空侵犯措置にどの様な規定があるか、そして、何が足りないかをあえて見ないようにして論じている逃げの論評でしかない。
そして、最もひどいのは自民党だと言って良い。
実は、自民党では2008年に任務遂行による撃墜の在り方という検討がなされているのだが、その後、明確な形で法整備や政府見解として「撃墜規定」を明示した事はただの一度もない。
こういうと、中には「手の内を晒すようなことを言う必要はない」と言い出すネトウヨと呼ばれる人たちが湧いてくるのだが、さすがにそんな短絡的な感情論で物事は解決しない。
手の内というのは、詳細な手続きを定めた、いわゆる交戦規則のことを指すのであって、そうした詳細を定めるために明示する必要がある「撃墜規定」を指す訳ではない。
ここのところを混同して何でもかんでも「手の内」と言ってしまうあたり、正直、何も分かっちゃいない。
こういう話をするときのスタートラインにあるのは、軍事知識でも法律知識でもない。そんなモノよりはるか以前に必要な物がある。
そして、日本で一番間違われているのがソコ。
「ぼくチンわかんないからセンモンカさんが決めたらいいんだよ」
などと言ってる人も多いだろうが、ミンスしゅg・・失礼、民主主義においての手続きというのは、有権者である国民の手によって決めるという必要がある。
なので、まずは、撃墜できるのか否かという部分を公開された議場において論じ、その賛否を問う事から話を始める事になる訳だ。
要するにアレよ。ブンミントーセーって奴な。
でも、間違ってはいけないのは、ブンミントーセーだから、ボタンを押すか押さないかをブンミンが逐一命令するという話ではない。
それを判断するのは交戦規則であって、現場でどういう状況でなら撃墜できるかを決める。その詳細なル ー ルを、ブンミンが承認して軍に渡すことが、本来的な意味でのシビリアン・コントロールというモノになる。
そこを間違って、ボタンを押す指の動きを縛る事だと勘違いしてるブンミントーセーでア~だコ~だ言ってみて、ポジティブだからダメで、ネガティブなら何でもできるなんていう誤った論じ方をしているのは、そもそも大きな間違いなのだが、なぜか、センモンカやらユーシキシャというお歴々に、そんな誤った認識の流布をする人々が多く存在している。
ちゃうねん。ポジだのネガだの言っても、大した話ではない。事前に大まかなルールを決めて、「ルール通りに撃墜するなら俺が責任を持つ」というのがシビリアンコントロールなんだよ。
で、ネガティブリストで「禁止事項以外なら何でもできる」っていうけど、禁止事項第一条って、政治の命令に反しない事だからね?
撃墜命令なしに撃墜して「ポジティブリストぉ!」なんて、そんな暴論は成立せんのよ?
なので、本当なら、2008年に「任務遂行」を求めた自民党は、「任務」つまりは交戦規則を作れるように、その前提になる撃墜規定をちゃんと自衛隊法で定めなきゃいけなかった。
そんな話、聞いた事ある?
ジエーケンがドーした、ドーメーこそはウンヌン。
でも、そう言う事をやる前に、自分の頭の上すらちゃんとしたルールも作れてないんじゃ意味ないんだけどね?
それにしても不思議だよね。15年も一切音沙汰がないって、自民党って何やってんだろうね?
そんな訳で、気球であれドローンであれ、戦闘機や爆撃機であっても、撃ち落とすには、まずは「撃墜規定」をちゃんと定めてから話をしないといけない。
誰もその事を言い出さない日本って、ホント、どうなってるんだろうね。