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葡萄

作者: もちた

 山に来た。

 9月とはいえ残暑が厳しい。

 少し歩くだけでも汗が吹き出る。

 暑さに耐えながら歩いていると、今にも弾けそうになっている、たわわに実った葡萄が木に成っていた。

 ここではあまり見たことがない葡萄だ。朝露がポタリと葡萄から落ちて、瑞々しさにゴクリと喉が鳴る。この残暑の中、この瑞々しさに勝てる訳もなく。葡萄を一粒手に取り、口に放り込む。

 じゅわり。果汁が口いっぱいに拡がった。

 

 ―美味しい。


 開放的な自然の中で食べる葡萄は格別だった。薄い皮をぷつと歯で噛む食感もたまらない。

 あと一粒。もう一粒。そうして気がつくと、一房食べ終えてしまっていた。


「あれ、俺は何しに来たんだっけ」


 何かをしに、山に来ようと思ったはずだ。だけど、それが何かが思い出せない。

 ぼんやりと脳に靄がかかる。目の前には、沢山の瑞々しい葡萄が木に成っている。

 ―ぶちり。

 引きちぎった葡萄を口の中いっぱいに頬張る。

 手も、服も、何もかも汚れるのも気にせず、ただひたすらに。


「あはは、美味しい、美味しいなあ」


 口から紫の雫が零れようとも、葡萄を頬張り続けた。

閲覧頂き、ありがとうございました。

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