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秘密を暴くもの
「さようなら。菫子さん」
「またね。麟」
* * * * *
「......また、この夢」
私はゆっくりとソファから起き上がり、台所で顔を洗う。きっと私があの一年を忘れることはないだろう。
「依頼人が来るの何時だっけ」
視線を横に動かしてカレンダーを見ようとする。だが、それよりも早く事務所のインターホンが鳴った。
「二度寝は無理そうね」
私はボヤきながら玄関へ向かう。扉の横にある帽子掛けから白いリボンの巻かれた黒い山高帽を手に取り、頭に被るとドアを開く。
そこには不安げな表情の女子大生が立っていた。ナイトキャップによく似た白い帽子から覗くウェーブがかったロングヘア。紫色のロングスカートと合わさってミステリアスな雰囲気だ。
彼女が今回の依頼人で間違いない。菫子は帽子を脱いで優雅に一礼し、また被り直す。
「探偵事務所『サーカス・レヴァリエ』へようこそ。私が座長の宇佐見菫子よ」
「依頼は何かしら、マエリベリー・ハーンさん?」