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秘封俱楽部活動記録 ~Last Occultician~  作者: 伽藍堂本舗
最終章『Angra Mainyu』
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西行妖

 紫を下した菫子は西行妖(さいぎょうあやかし)を目指して廊下を走る。外へ飛び出した菫子。その視界に飛び込んできたのは絶えず舞い散る桜の花びら。樹齢数千年はあろうかという巨大な桜。そして、それを守護するように立つ銀髪の少女だった。


 「あんたは確か......」


 「私の名は魂魄妖夢(こんぱくようむ)。西行寺家にて使用人をしておりました」


 「先に言っとくけど紫の奴は既に倒したわよ」


 「そうですか。では、彼女はお返ししましょう」


 そう言って妖夢は麟から手を放す。菫子は油断なく妖夢を観察する。だが、妖夢は何もしようとしない。

 駆け寄ってくる麟。だが、菫子はてのひらを前に突き出してそれ以上の接近を拒否する。


 「......麟が騒音塔の話をしたとき、私が何を読んでたか覚えてる?」


 「新聞だったはずです。確か、Graveyardがどうとか」


 「藍あたりが化けてるかと思ってたんだけど本物みたいね」


 菫子は警戒を緩める。そして、再び妖夢に視線を向ける。


 「彼女は既に機能を停止しました。紫様が倒されたので」


 「そう、あんたの主人は?」


 「幽々子様でしたら半刻ほど前に」


 そう言って妖夢は西行妖を指差す。


 「同化したってわけね」


 菫子は西行妖を見上げる。そして、麟に紙束を渡す。


 「これは?」


 「......入学式のとき、麟は魔導が無いって言ったわよね」


 「ええ、検査結果にそう書かれていたので」


 「その検査結果は偽造よ。その資料が本当の検査結果」


 信じられない、といった様子で渡された資料を読む麟。妖夢は全てを聞かされていたのからしく、これといった反応を示さない。


 「(あいつ)はこの世界を他世界と繋ぐことで間接的に時間流に固定しようとしていた。その為に必要だったのが麟とこの西行妖ってわけ」


 「【(サーカス)】、これが私の魔導......」


 呆然と呟く麟。自身がさまざまな組織から執拗に狙われた理由がようやく分かったのだ。その衝撃は想像に難くない。


 「私は聖人君子じゃない。だから、世界の命運よりも友人の安全を優先する」


 菫子の全身が菫色のオーラに包まれる。身の危険を察した妖夢と麟はすぐさま菫子から距離を取る。二人が離れたことを確認した菫子は咲き誇る西行妖を睨みつける。


 「紫は斃れ、麟は解放された。残るは西行妖のみよ」



 ──【パイロキネシス】。

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