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秘封俱楽部活動記録 ~Last Occultician~  作者: 伽藍堂本舗
最終章『Angra Mainyu』
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自分本位な多世界解釈

 見慣れた校内を迷いなく進む菫子。以外にも紫たちからの妨害は無い。誘い込まれているような不快感を押し殺し、紫がいるであろう学園長室へ向かう。


 「さて、ご対面願おうかしら」


 レミリアのように扉を開けた瞬間、即死するような罠が仕込まれている可能性もある。菫子は慎重かつ大胆に扉を開く。


 バァンッ!


 勢いよく扉が開け放たれる。だが、何も起こらない。扉の向こうには黒幕が腰掛けているだけだった。


 「霊夢たちはついてきてくれなかったのかしら?」


 「労働基準法が改正されたからね」


 菫子は自らを奮い立たせるように笑みを浮かべ、部屋へ足を踏み入れる。紫がパチンッ、と指を鳴らすと一人でに扉が閉まる。それを見た菫子は【瞬間移動(テレポーテーション)】が可能か試すが、不発に終わる。


 「後悔してるのかしら?」


 「まさか、想定内よ」


 閉じ込められ、【瞬間移動(テレポーテーション)】を封じられる状況は「騒音塔」で経験済みだ。


 「勿体ぶる必要は無いわ。話したくて堪らないんでしょ?」


 「心外ね。私がペラペラと計画を喋る馬鹿に見える?」


 「人を攫ってる時点で大馬鹿よ。とっとと白状しなさい」


 紫はそれもそうね、と言わんばかりに肩をすくめる。そして、自らの計画について話す。


 「西行妖(さいぎょうあやかし)を使ってこの世界を他の世界に接木する。そうしてこの世界の消滅を防ぐのが私たちの目的よ」


 「この世界さえ残れば他の世界はどうでも良いわけ?」


 「ええ、だって()()()()ですもの。貴女だってニュースで見聞きした事件をいちいち気にしないでしょう?」


 「......麟を攫った理由は? どこにいるの?」


 「麟の魔導を使って西行妖の根を他の世界へ張るの。完全な接木を行うための魔力は幽々子で賄うわ」


 「麟と幽々子を犠牲に世界を救う。大した計画ね。けど、私には関係無いわ」


 この世界の住民である紫にとっては麟と幽々子の犠牲は受け入れられるのかもしれない。だが、異世界人である菫子は違う。世界の危機よりも麟の方が大切なのだ。価値基準が違う以上、これより先は力ずくで意見を通す他ない。


 「【念力(サイコキネシス)】」


 不可視の手が空き缶を捻り潰すように紫を捻り潰そうとする。だが、手応えがない。まるでホログラムを相手しているようだ。


 「この場に居ない? いや、違う」


 【念力(サイコキネシス)】によって生み出された力場は確かに紫の存在を菫子に伝えている。だが、目の前の紫は無傷だ。紫の魔導については霊夢から聞いている。だが、実際に使っているのを見たのは騒音塔の帰りだけだ。


 「これが【幻想(レヴァリエ)】、境界を操る程度の能力の真髄ってワケね」

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