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秘封俱楽部活動記録 ~Last Occultician~  作者: 伽藍堂本舗
最終章『Angra Mainyu』
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不死身の怪物

 「癪だけど言われた通りね。私に人殺しの覚悟が無かっただけ」


 「肉」を捻り潰す嫌な感覚。だが、董子はレミリアに勝利した。レミリア()()()()()へ目を向ける。そこにあるはずの死体が無かった。


 「まさか、捻じ切られるとは思わなかったわ」


 聞き覚えのある、聞こえるはずがない声。よく見ると黒い霧のような()()が血痕の周囲に漂っている。


 「【発火能力(パイロキネシス)】」


 董子は即座に追撃しようとする。だが、それよりも早く霧が細腕に変化する。ほぼ同時に董子は喉元を掴まれ、押し倒される。そこからは一瞬だった。まるで逆再生するように霧がレミリアへと変化する。


 「吸血鬼」


 「ご名答」


 早鬼と八千慧の容姿を回想する董子。ここは異世界。この世界には人ならざる存在が居る。目の前の彼女もきっとそうなのだろう。


 「王手よ」


 レミリアが力を籠めるとみしり、と頸椎が軋む音がする。


 「【水流操作(ハイドロキネシス)】」


 高圧の水流がレミリアを襲う。だが、レミリアは董子を押し倒したまま、その全てを避けて見せる。続けざまに【発火能力(パイロキネシス)】を発動。炎に包まれるレミリアだが、ビクともしない。むしろ、密着している董子の方が火傷してしまう。


 「【水流操作(ハイドロキネシス)】、解除」


 レミリアが飛び退く。同時にずぶ濡れになる董子。


 「流水が苦手なのは伝承通りね。銀の武器もダメなの?」


 そう言いながら床に散らばった銀食器を全力で投げつける。だが、レミリアは全て避けるか、羽で叩き落としてしまう。


 「(これ)があるとすぐにバレるから出したくないんだけど」


 「正体云々なんて今更でしょ」


 「それもそうね」


 羽が一回り大きくなり、羽ばたく。と同時に床を高速で滑空し、突進する。突き出した腕は一撃で壁に穴をあける。パワーは全く変わっていないようだ。崩れた瓦礫を【念力(サイコキネシス)】で投げつけるが、霧や無数の蝙蝠に変身され、躱される。流水もただぶつけるだけでは身体能力で強引に回避される。


 「滅茶苦茶ね」


 「スピード」「パワー」「タフネス」どれをとっても格が違う。弱点も多いがそれ以上に無法なスペックで弱点を突かせない。つまるところ、弱点が弱点として機能していない。


 「むぅ……」


 流水は有効だが、当たらない。物理攻撃全般は無効化される。炎や銀食器は効きはするが効果は薄い。


 「日光、は無理か。朝まで私が持たない」


 手軽に封印できるようなアイテムもなければ、交渉も難しい。


 「陰気な顔してるわね」


 「誰かさんのせいでね」


 覚悟はあるが、術がない。董子は回避しながら頭を捻る。


 「賭けはあんまり好きじゃないんだけど」


 董子はレミリアを見据える。コンティニューはできない。残機もない。


 「大人しく殺される気になった、わけじゃなさそうね」


 当然、レミリアも董子が一計を案じていることに気づく。だが、突撃する以外に選択肢はない。睨み合いで不利なのはレミリアなのだから。


 「【念力(サイコキネシス)】」


 レミリアの突進に合わせ、董子は超能力を発動する。貫手突きが董子の胴を捉える。だが、外向きの念力を鎧のように纏った胴を貫くには至らない。角材で横殴りにされたような衝撃に耐え、董子はレミリアを捩じ切ろうとする。だが、霧となって避けられる。


 「【発火能力(パイロキネシス)】」


 董子は防御を捨て、最大火力で霧に変化したレミリアを焼き尽くす。


 「最初に潰されたとき、追撃を防いだわよね」


 返事はない。だが、初めて霧と化したときのように再生して襲ってこない。


 「正解みたいね」


 本社の上部が吹き飛び、火柱が上がる。勝者を告げる炎が闇を照らす。

いつもご愛読していただき、ありがとうございます!おかげさまで4,200PVを達成できました!


ブクマやいいねをされていない方はこの機会にぜひお願いします!


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