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秘封俱楽部活動記録 ~Last Occultician~  作者: 伽藍堂本舗
最終章『Angra Mainyu』
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偶像と狂信者

 「まあ、素通りはできないわよね」


 スカーレット財閥の本社へ到着した一同。それを待ち構える二つの人影。菫子たちが入口へ近づくにつれて徐々に人影がはっきりとしてゆく。


 「お前はッ!」


 青いロングヘアと緑の頭巾を被り、緑のエプロンの下に黄色のワンピースを着た古代の巫女か陶芸家のような雰囲気の女性。彼女の名は埴安神袿姫。鬼傑組や勁牙組などと並ぶ巨大組織「イドラデウス」のトップである。


 「久しぶりね、その節はどうも」


 「どうしてここに」


 天子が問う。その手には剣が握られていた。それを見た袿姫は呟く。


 「仕方がない、仕方がないねぇ」


 「早く行きなさい。アイツは私がやる」


 睨み合う天子と袿姫を追い越して菫子たちは建物内部へ進もうとする。だが、もう一つの人影の正体である紅美鈴が立ち塞がる。


 「行かせませんよ」


 緑を基調とした華人服とチャイナ服を足して割ったような衣装を着た燃えるような赤髪が構える。それを見た青娥が溜息をついて前に出る。


 「任せるわよ」


 「ええ、すぐに追いつきますわ」


 「芳香も戦うぞー!」


 菫子たちは天子に袿姫を、青娥と芳香に美鈴をそれぞれ任せ、建物内へと消える。


 「金髪女が居ないようだけどあなた一人で大丈夫なのかしら?」


 すると、袿姫が指を鳴らす。即座に剣を振るう天子。だが、甲高い音ともに首を狙った白刃は弾かれる。現れたのは古明地組との戦いで埴輪兵団の指揮をしていた金髪をお団子にまとめた女性だった。


 「磨弓、だっけか」


 構え直された剣がかちゃり、と音を立てる。ほぼ同時に磨弓が突進する。手甲で剣をいなしながら拳を打ち込もうとする。だが、天子も洗練された足捌きと剣捌きで攻撃をいなす。至近距離で金属音と火花を散らしながら戦う二人。


 「はっ!」


 「よっ!」


 磨弓に投げられるが、瞬時に身体をひねり、地面に手をついて着地する天子。同時に魔導を発動し、追撃しようとしていた埴輪を分解する。


 「やっぱ、量産型だとダメねぇ」


 袿姫はエプロンにしまってあった彫刻刀を取り出し、地面に突き刺す。すると、地面が隆起し、土塊が形を成す。


 「ゴーレムってやつ? ただバラすだけじゃダメそうね」


 巨大なゴーレムは鈍重な動きながらも一歩一歩確実に天子へ近づく。もちろん、磨弓は攻撃の手を緩めない。


 「邪魔、一旦離れなさいッ!」


 天子は磨弓が僅かに距離を取った瞬間、地面を円柱状に伸ばし、吹き飛ばす。続け様に円柱を槍状に変化させ、横薙ぎに叩きつける。脚部をへし折られ、文字通り崩れ落ちるゴーレム。


 「はああッ!」


 地面を蹴り、袿姫との距離を一気に詰める。天子は全力で剣を振り下ろす。すんでのところで磨弓が割り込み、交差した両手で受け止める。だが、天子はさらに踏み込む。


 「せりゃあッ!」


 気勢とともに剣を勢いよく振り抜く天子。磨弓の腕が()()()()


 「まさか、コイツも!?」


 天子は剣を突きつけながら袿姫を見る。袿姫は両手を上げて降参の意を示す。次の瞬間、磨弓が崩れ、砂に戻る。


 「磨弓は貴女の魔導で分解されないみたい。でも、腕が壊されちゃダメね。作り直さないと」


 「アンタ、頭おかしいんじゃないの?」


 理解の埒外にあるものを見る目で袿姫を見る天子。だが、袿姫は不思議そうに返答する。


 「中身が同じなら外見なんて些細なものでしょう? 今まで何度か入れ替えてるけど変わらず忠義を誓ってくれるし」


 磨弓だったものから入魂(インストール)していた人格を回収した袿姫。


 「これ以上、磨弓を壊されちゃたまらないし、もう関わらないわ」


 そう言い残し、袿姫はスカーレット財閥の本社を後にする。

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