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秘封俱楽部活動記録 ~Last Occultician~  作者: 伽藍堂本舗
最終章『Angra Mainyu』
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カチコミ

 「起きろー! カチコミの時間だぞッ!」


 翌朝、菫子たちは早鬼の大声で目を覚ます。早鬼が高笑いしながら外に出て行ってから程なくして派手なエンジン音が辺りに轟く。


 「鉄火場に出る機会なぞ少ない方が良いに決まっているのに。あの脳筋天馬」


 「仕方ない。車に乗りなさい、行くわよ」


 あうんと衣玖を事務所に残し、菫子たちは外へ出る。霊夢たちも車に乗り込む。


 「ときに菫子さん、貴女は異世界出身だそうで?」


 菫子が車のドアに手をかけたとき、八千慧がそう話しかける。


 「どこでそれを、などという陳腐な返答は無用です。私の情報網を侮らないでください」


 菫子はドアから手を離し、八千慧の方へ向き直る、八千慧は口元に扇子を当てたまま、値踏みするような目でジッとこちらを見つめている。


 「今、それを私に伝えた理由は?」


 唇が乾く。空気が張り詰め、緊張感が周囲の空間を満たしてゆく。


 「日陰者に今までのやり方が通用すると思わないように、くれぐれも私の足を引っ張らないでくださいね」


 菫子の問いは無視してそそくさと車に乗り込む八千慧。菫子は釈然としない気持ちを抱えながら車へ乗り込み、扉を閉める。


 「スカーレット財閥に行ったときを思い出すわね」


 運転席に座っていた早鬼が菫子の独り言に反応する。振り向こうとする早鬼。それに気づいた霊夢が御幣で叩く。


 「前見て運転してもらえる?」


 「はっはっはッ! つい、な」


 霊夢の苦言を笑い飛ばす早鬼を見て溜め息をつく八千慧。天子と菫子は霊夢たち三人の様子を見て苦笑する。次の瞬間、早鬼の雰囲気ががらりと変わる。後部座席からでも分かる緊張感。菫子が問いただすよりも先に三人が動く。


 『菫子さん。瞬間移動(テレポーテーション)を』


 八千慧が静かに、だがよく通る声で指示を飛ばす。ほぼ同時に早鬼が扉を蹴り開ける。刹那、五人の乗っていた車が激しく炎上する。


 「お燐〜、当たった?」


 「バッチリ。ただ、()()()()()()だね」


 癖毛気味な長い黒髪の女性が燃えるような赤毛を根本と先端を黒いリボンで結んだ三つ編みの女性に問いかける。


 「あー、ホントだ」


 目を凝らした黒髪の女性が納得の声を上げる。視線の先に居たのは八千慧と天子ごと瞬間移動(テレポーテーション)した菫子。そして、そこへ駆け寄る早鬼と霊夢の姿だった。


 「早鬼はドアを蹴破って脱出したみたいだねぇ。霊夢は御幣で窓ガラスを叩き割ったのかな」


 そして、お燐と呼ばれた赤毛の女性は電話をかける。


 「さとり様、不意打ちは失敗です。撤退しますか?」

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