邪の道は
「なるほどねぇ」
紅白の巫女服を着た霊夢は目の前のテーブルに両足を乗せ、ソファに深く腰掛けながらそう呟く。
視線の先にいるのは黒の山高帽を被り、薄紫のプリーツスカートを着た菫子。その横では半袖にロングスカートを履いた長い青髪の女性、天子が無言で佇んでいる。
「……私は紫たちを倒して麟を助けるために頑張って来た。けど、映姫との戦いで分かったわ。私1人の力じゃどうにもならないとこまで来たってことがね」
そう言って菫子は固く手を握りしめる。それを聞いた麟は黙り込んでしまう。心なしか、フリル調の巫女服とリボンでまとめられた金髪もしなびているように感じる。
一方で天子と霊夢は軽く微笑む。ほぼ同時に事務所の扉が勢いよく蹴り開けられる。
「霊夢ッ! 邪魔するぞッ!」
現れたのはカウボーイハットを被り、白のスカーフを首に巻いた女性。服装はパフスリーブのワンピースの下にミニスカート、靴はロングブーツという典型的なカウガール衣装だ。ただ1点、漆黒の翼が生えていることを除けば。
「この羽が気になるのか? なら、次に来るヤツを見たらもっと驚くぞッ!」
「人を珍獣の如く紹介しないでいただきたいのですが?」
蹴り開けられた扉を後ろ手に閉めながらボヤく赤い目をした金髪の女性。だが、鹿のような角を生やし、背中には鱗が重なりあった甲羅を背負った彼女がただの人間ではないことは一目で分かる。
「おや、饕餮は来ていないのですか?」
女性は臀部から生えた龍のような尻尾を左右に揺らし、心地良い声で疑問を口にする。そして、自分を見つめる菫子に気がつくと丁寧に名乗る。
「ああ、申し遅れました。私は吉弔八千慧、そこの野蛮なカウガールは驪駒早鬼といって私の同業者です」
八千慧と名乗った女性はそう言って菫子たちに一礼する。だが、2人を連れて来たであろう衣玖とあうんはずっと渋い顔をしている。
「ビジネスの調子は?」
「好調ですよ。霊夢さん」
「アウトローの興行が上手く行くなんざ不景気な話ね」
霊夢が嘆息する。そして、立っている全員に座るよう促す。
霊夢、菫子、麟、衣玖、あうん、天子、八千慧、早鬼の8人がぐるりと丸いテーブルを囲む。
「まず、事の次第について簡単に説明するわ」
霊夢がそう切り出す。
「古明地組とそれに与するイドラデウスの壊滅が目的よ。上手くいけば神霊党、古明地組、依神金融を処理できるわ」
「なんで依神金融が出てくるワケ?」
「当然の疑問でしょう、菫子さん。それについては私から説明します」
八千慧は懐から契約書を取り出し、見せびらかすようにヒラつかせながら続きを話す。
「スカーレット財閥を壊滅させるにあたって依神金融を味方につける必要がある。その交換条件として出されたのが古明地組の壊滅。奇しくも利害が一致したのです」
「んで私らは依神ンとこからイドラデウスについて知らされたからここに居るってワケだ」
そして、と付け加える早鬼の声のトーンが下がる。
「太子様が関わっている以上、私はあのクソ教祖をボコる以外は何もしないぞ」
早鬼が恫喝するように低い声で念を押す。
「分かってるわ。動くのは明日の朝、時間はかけられないからさっさと終わらせるわよ」
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