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秘封俱楽部活動記録 ~Last Occultician~  作者: 伽藍堂本舗
最終章『Angra Mainyu』
33/53

覚悟

 ──探偵事務所『夢想堂』


 「……縁ってのはホントに難儀なもんね」


 「お世話になります。霊夢さん」


 「なんで天子が夢想堂(ココ)にいるわけ?」


 「監視のために決まってんでしょ。まあ、Graveyard自体が消滅したみたいだから無駄だったみたいだけど」


 あうん、霊夢、天子、衣玖、董子、麟の6人は互いに疑問をぶつけあい、答えあう。衣玖の能力によって駆け付けた天子によって逃走に成功した董子たちだが、問題が解決されたわけではない。


 むしろ、目先の危機が去ったがゆえに根本的な問題が可視化されたとも言えるだろう。


 「麟が『聖杯』とイコールだってのも気になるけどもそれより先に解決すべき問題があるわ」


 「指名手配、ですね?」


 「その通りよ、衣玖。紫は間違いなく董子を指名手配してくるはず」


 「ですが、相手は裁判所ですよ?」


 「ん? なんで指名手配で裁判所が出てくるワケ?」


 「はあ? 指名手配はどう考えても裁判所がするもんでしょうが」


 「ああ、なるほどね」


 霊夢の言う通り、「この世界」ではそうなのだろう。この場合、董子の方がおかしいのだ。世界が異なれば常識も異なる、そんな当たり前のことを董子はここにきてようやく理解した。


 「とりあえず、董子は四季映姫と会ってなんとしても指名手配を防ぎなさい。その間に私は紫たちについて調べとくから」


 「私も行くわよ」


 「好きにしなさい」


 こうして董子と天子は「董子の指名手配」を防ぐために最高裁判所へ向かうこととなった。




 * * * * *




 最高裁判所へ到着した董子と天子は白杖を手にした映姫に出迎えられた。


 「ようこそ」


 こちらを推し量るような視線に加え、裁判官が着用しているギャベルを軍服風にアレンジしたような緑色の服と高めの身長、紅白のリボンをつけた厳かな帽子が合わさってかなりの威圧感だ。なんとも言えないむず痒さと気まずさを感じる2人を無視して映姫は言葉を続ける。


 「こちらへ」


 そう言って映姫は白杖を使いつつも素早く歩き始める。顔を見合わせるも他に選択肢は無いと察し、2人は映姫の後を追う。行進のように全く乱れない歩調で裁判所内を迷いなく進む映姫。裁判所の廊下に廊下に硬質な靴音が規則的に響く。映姫はある部屋の前でピタリ、と立ち止まり、扉を開く。どうやら執務室らしく、壁際の本棚には法律に関係する書物が、部屋の奥には黒檀の上等そうな机が鎮座している。


 「どうぞ」


 映姫は無愛想ではあるものの礼儀正しい態度で二人にソファへ腰掛けることを勧める。腰掛けた菫子は耐えきれずに質問する。


 「なぜ、私たちを?」


言葉足らずな質問だが、映姫は菫子が押し殺した疑問を的確に察知し、返答する。


 「私は八雲紫から豊聡耳神子を経由し、あなたの指名手配を指示されました。しかし、人づての指示を根拠に取り返しのつかない判断を下すことは私の矜持に反します」


 ここにきて2人は映姫という人物を理解した。揺るぎなき自信と信念に基づく責任感。最高裁の裁判長を長きに渡って勤めるだけのことはある。


 「私が『聖杯』に望むのは罪なき世界です。これを実現するべく八雲紫と手を結びました。ですが、貴方が指名手配されるべき悪人であると私は思わない」


 映姫はまっすぐこちらを見据える。


 「手合わせをしましょう。貴方の覚悟を問います」

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