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秘封俱楽部活動記録 ~Last Occultician~  作者: 伽藍堂本舗
最終章『Angra Mainyu』
32/53

フィクサー

 「まずはご苦労様と言うべきかしら?」


 道士服とウェディングドレスを足して2で割ったような服装の女性、八雲(やくも)(ゆかり)はそう切り出す。紫の横に座ったピンク髪の女性が机に置かれた茶菓子を頬張る音以外は何も聞こえない。学園長室を重苦しい沈黙が支配する。


 「……私の後ろに立っている女性と学園長の隣に座っている女性は一体?」


 董子が出方を窺うように問う。紫は董子の質問に対してよどみなくにこやかに答える。水色の和服に身を包んだピンク髪の女性の名は西行寺(さいぎょうじ)幽々子(ゆゆこ)。平安時代から続く西行寺家の当主にして紫の旧友であるらしい。

 董子と麟が座っているソファの後ろに立つ2振りの日本刀を携えた銀髪の女性の名は魂魄(こんぱく)妖夢(ようむ)といい、西行寺家の邸宅である「白玉楼」の庭師と当主である幽々子の護衛を任されている人物だそうだ。


 「気にする必要はないわ。それよりも本題に入りましょう」


 2人の紹介を終えた紫は董子と麟を呼び出した理由に言及する。


 「初めに言った通り、『graveyard』の壊滅、お手柄だったわね」


 「まあ、成り行きであんな経験した身としては複雑だけど」


 勿体ぶった割に当たり障りのない内容。休校中に呼び出されたこともあって董子は皮肉と苛立ちが混じった返答をする。


 「マミゾウが貴女たちの顧問を請け負った理由は麟に近づくためであると考えられます」


 「……でしょうね」


 「ですが、貴女の活躍によって『graveyard』は壊滅しました」


 「……さっき聞いたわ」


 「『graveyard』の存在は私たちにとって解決すべき問題でした。それが解決したのは実にありがたいことですわ」


 「おかげさまで私たちの計画を実行に移せるものね?」


 丁度、用意されていた茶菓子を食べつくした幽々子が紫の言葉に同意する。


 「思えば貴女の転移も、あなた方を同部屋にしたことも全てがこのためでした」


 「……霊夢さんが都合よく騒音塔に現れたことや麟を職業体験へ行かせることを渋ったのも?」


 「ええ、全て私の仕業です」


 集会で今後に予定を生徒に伝えるような調子で紫は言う。この数十秒で明かされた情報を理解しきれず、固まる麟。董子は紫が言葉を言い終えるよりも早く麟を連れて『瞬間移動(テレポーテーション)』しようとする。


 「無駄ね」


 藍の言葉通り、董子は『瞬間移動(テレポーテーション)』に失敗する。


 「ならッ!」


 「無駄です」


 董子は即座に『念力(サイコキネシス)』を発動、強引に学園長室から脱出しようとする。だが、それよりも早く抜妖夢が董子の首筋に白刃をあてがう。


 「人の話は最後まで聞くものよ」


 「何が目的?」


 「意外と察しが悪いのね。あなたの隣に居る冴月麟が目的よ」


 「私ですか?」


 「待ちなさい。麟は魔導を使えないのよ? 何の価値があるってのよ」


 「やっぱり察しが悪いわね。麟こそが『聖杯』なのよ」


 「あっそ。それで? 麟を使って何をしたいワケ?」


 首筋に冷たい刃を当てられようとも董子は憎まれ口を叩く。会話を続けつつ、手札を切っていくも全て不発に終わる。


 「この世界は遠からず行き詰まる。行き詰まった世界は緩やかに消滅するわ」


 「そう、それはご愁傷様」


 「あら、意外に薄情」


 「友人の犠牲が無きゃ存続できない世界なんてとっとと滅ぶべきよ」


 「なら、細かいことを話すだけ無駄ね。私たちは貴女を殺したあと、『聖杯』を使ってこの世界を救うことにするわ」


 紫が冷たく言い放つ。同時に幽々子が首を切るジェスチャーをする。幽々子の指示を受けて妖夢が日本刀を振りかぶり、一気に切り下ろす。







 「私の友人はまだ無事なんでしょうねッ!?」


 頭上から響く声。直後、途方もなく巨大な岩石が学園長室のある棟を完膚なきまでに粉砕した。


 「ついてきなさいッ!」


 腕を引っ張られ、立ち込める粉塵の中を走る二人。土の匂いに混じってかすかに匂う桃の香り。


 「間に合ったみたいね!」


 自身満ち溢れた尊大な口調。


 粉塵が晴れ、二人の視界に映ったのは青空のように爽やかな青髪だった。


 「天子ッ!?」


 ──二人の窮地を救ったのは比那名居天子その人だった。

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