ヤな感じ
──東火学園、廊下。
廊下に響くカランコロンという下駄特有の足音。足音の主は二ツ岩マミゾウ、東火学園の教員であり、『Graveyard』のボスでもある人物だ。下駄の音を響かせて人気のない廊下を歩くマミゾウ。
「お困りのようね?」
マミゾウが振り向く。立っていたのは研ぎ澄まされたナイフのような雰囲気を醸し出す銀髪の女性。女性の名は十六夜咲夜。スカーレット財閥のCOOを務めている。
「まあの。魔理沙は騒音塔に続き2度目の失敗、天子と衣玖も絆されて裏切りおった」
不快感を露わにするマミゾウ。本来、今回の職業体験は紫から麟が離れる数少ないタイミングであり、誘拐する絶好のチャンスだった。しかし、騒音塔で魔理沙がしくじったせいで紫が警戒を強め、最終的に職業体験そのものが無くなってしまった。
「……けれど、騒音塔での一件を指示したのは貴方では?」
咲夜は表情を変えることなく問う。だが、マミゾウは答えない。咲夜はため息をつき、マミゾウへ歩み寄る。コツコツとハイヒール特有の足音が冷え切った廊下に冷たく反響する。
「どいつもこいつも勝手に動きよってからに。全く計画が進まんわい」
「そのようね。けれど、気にすることはないわ」
灼熱感。黄緑色の着物が朱に染まる。突き立てられた白刃が引き抜かれると共に崩れ落ちるマミゾウ。
あまりにも華麗な暗殺劇。
「私はお嬢様の命でGraveyardへ潜入してだけ。『聖杯』を使って世界征服しようとしていたみたいだけど所詮は小悪党ね」
咲夜は血だまりへ倒れ伏すマミゾウへ向けて部下や構成員が勝手に動くのはトップが無能だからよと言い放ち、ナイフをホルスターに納める。
次の瞬間、咲夜の姿が忽然と消える。静寂だけが満ちる廊下に残されたのは物言わぬ骸と化したマミゾウだけだった。
* * * * *
「麟ッ! 無事ッ!?」
「? 無事ですよ?」
「そう、なら良いのよ」
天子からgraveyardのボスについて知った董子はすぐさま【瞬間移動】で学園へ帰還。寮の部屋へと急いで向かった。最悪を想定しつつ開いた扉の先には最後に見たときと何一つ変わらない麟の姿があった。安堵する董子。
翌日、開かれた緊急の全校集会にて「二ツ岩マミゾウ」の失踪が伝えられた。同時に学園が休校することも知らされた。どうにも嫌な予感がする。
言い知れぬ胸のザワつき。
「やな感じね」
体育館を出た董子は曇り空を見上げ、呟く。
いつもご愛読していただき、ありがとうございます!おかげさまで3100PVを達成できました!
ブクマやいいねをされていない方はこの機会にぜひお願いします!
また、この文の下にある「☆☆☆☆☆」をタップして「★★★★★」にしていただけると嬉しいです!




