勝ち筋
「ようやく出てきたわね」
天子は岩陰から飛び出した董子に狙いを定める。それより早く董子が動く。
「発火能力」
天子の模造刀が熱を帯びる。即座に剣を手離す天子。どうやら、模造刀は能力の行使と無関係のようだ。天子の手が指揮をするように動き、それに合わせて巨岩が董子に襲いかかる。董子はギリギリで巨岩を躱す。
一瞬、董子は動きを止める。天子はその隙を見逃さない。足を止めた董子に無数の巨岩が降り注ぐ。
「水流操作」
董子が襲いくる巨岩に向けて水をぶつける。泥となって自壊する巨岩。立て続けに董子は発火能力を発動。一瞬にして泥から水分が失われ、砂塵に変わる。砂煙がグラウンド全体を覆う。
グラウンドを覆いつくした砂煙は風に煽られ、校舎にまで到達する。あうんたちは砂煙の立ち込めるグラウンドへ目を向ける。あうんたちからは天子の姿も董子の姿もあうんたちからは確認できない。だが、衣玖はいち早く戦況の変化に気づいた。
「決着がついたようですね」
衣玖の雰囲気が変わると同時に砂煙が晴れる。天子が状況を把握するより早く、董子の鉄拳が飛ぶ。天子の脇腹を思いっきり殴り飛ばす董子。だが、その一撃が天子の意識を刈り取ることはなかった。
「……やるじゃない」
殴られた脇腹を抑えながら天子は董子を捉える。
「気に入ったわ、貴方の勝ちよ」
「はぁッ!?」
予想だにしない天子の言葉。董子は素っ頓狂な声を上げてしまう。唐突に負けを認めた天子は能力を解除する。
「そもそも、私たちと貴方たちが戦う理由はgraveyardでしょ?」
「そうだけど」
服をはたいて砂を落としながら天子は話す。
「じゃあ、graveyardから私たちが抜ければそれでいいじゃない」
校舎に向かって歩きながらしゃべり続ける天子。慌てて後を追う董子。そのまま、二人は阿吽たちのいる教室へと戻る。教室へ入る董子。そこには天子と同じように降参した衣玖と状況が呑み込めていないあうんが居た。
「董子さん! 無事だったんですね!」
「まあ、ボロボロだけど。どういう状況?」
「衣玖の【羽衣】は流れを読む能力よ。私が降参することを察して降参したんでしょ」
天子はそう言いながら椅子に腰かける。同時に教室の扉が乱雑に開かれ、霊夢が現れる。
「霊夢さん、今までどこに?」
あうんが尋ねる。だが、霊夢はあうんの質問を無視して適当な椅子に腰かけると天子の方を指し示す。
「まずはソイツの話を聞いてからよ」
そう言われ、あうん、衣玖、董子の三人は天子に注目する。すると、天子が話し始めた。
「私と衣玖は今この瞬間にgraveyardから抜けることにしたわ」
「証拠は? 言うだけタダでしょ、そんなの」
「その通りよ、董子。霊夢、graveyardの資金源は?」
「アンタらの支援。つまり、graveyardに流れる金の動きを見ていれば今の言葉が事実か確認できるわ」
「大正解、というワケで私たちが争う理由は無くなったわね」
「急に降参した理由は?」
董子が天子に問いかける。すると、天子は不思議そうな表情で返答する。
「アンタのことを私が気に入ったの。それ以上でもそれ以下でもないわ」
「私を除いたこの場で最も影響力があるのは天子。ソイツが董子を気に入ったんだからこうなるのは必然よ」
そう言うと霊夢は天子へ話しかける。
「さて、味方になったんならgraveyardについて話してもらおうかしら?」
天子はちらりと董子を見たあと、意を決した表情で真実を明かす。
「魔理沙への依頼主。つまり、graveyardのボスは二ツ岩マミゾウよ」
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