ランクマッチ
合図と同時に銃を抜き、引き金を引く鈴仙。放たれた銃弾をフランは容易く打ち払う。銃弾を躱し、懐へ飛び込むフラン。即座に発砲する鈴仙。後ろへ跳躍したフランを蹴り飛ばす鈴仙。だが、着地と同時に鈴仙へ向けて弾かれたように突進する。鈴仙が引き金を引くより早く、フランは蹴りを放つ。だが、フランの蹴りは鈴仙をすり抜けた。柱が蹴り砕かれる。
「幻影?」
冷静に周囲を観察するフラン。辺りに鈴仙の姿は無い。フランが横へ跳ぶ。同時に鈴仙がナイフを突き立てる。すぐにナイフを蹴り飛ばすフラン。
「外した……」
その言葉とともにスゥッと消える鈴仙。フランは蹴り飛ばしたナイフを拾い上げ、握り潰す。辺りを警戒するフラン。
──次の瞬間、五人に増えた鈴仙が一斉にフランへと襲い掛かる。
直後、フランを中心にドーム状に広がった何かによって鈴仙は吹き飛ばされ、コンクリートの壁に激突する。
「どうやらあなたの魔導は私の魔導と相性が悪いみたい」
「らしいわね」
「降参する?」
「遠慮しとくわ。まだ勝負はついてないもの」
鈴仙の瞳が鮮やかに光り輝く。直後、フランの視界が黒で塗り潰される。
「こういうこともできるのね、幻影って」
自分の身に起きた異常を即座に見抜くフラン。しかし、理由が分かったところで視界は奪われたままだ。一方、鈴仙はフランの背後に回りつつ、そっと二本目のナイフを抜く。
乾いた破裂音が響く。投擲されるナイフ。その両方を完璧に捌くフラン。直後、フランに組み付く鈴仙。一気にフランを締め上げる鈴仙。だが、フランは鈴仙ごと立ち上がる。片腕で鈴仙を引き剥がし、叩きつける。地面に激突した鈴仙はそのまま気絶する。
「鈴仙・優曇華院・イナバ、戦闘不能。よってフランドール・スカーレットの勝利」
そう紫が宣言すると同時に『勝者、フランドール・スカーレット』という文字がディスプレイ上でチカチカと点滅する。
「これ、鈴仙は大丈夫なの?」
「はい、異空間内での出来事は現実に影響しないので」
ふと正面を見ると紫が何かを話そうとしていた。菫子はそちらに意識を向ける。
「続いて新入生・転入生の魔導適正検査を始めるわ」
──魔導。先ほどの戦いを見る限り、能力バトルに登場するような特殊能力のたぐいなのだろう。だが、詳しいことはさっぱり分からない。
「気になりますか? 適性検査」
「まあ、かなり大事なことみたいだし」
「そうですね、魔導は大事ですから……」
どこか寂しそうな麟。麟に一言断って菫子は列の最後尾に回る。しばらくすると検査後の列が伸び始める。頃合いを見て瞬間移動する菫子。検査を躱した菫子は流れに任せて進んでいく。生徒の流れから抜け出した菫子は廊下の端に寄る。そうしてしばらく待っていると麟が駆け寄ってきた。
「お待たせしました、菫子さん」
「結構遅かったわね」
「生徒の流れから中々抜け出せなくて」
「そう」
「ところで私たち、部屋が一緒のようです」
「部屋って学生寮の?」
「はい、凄い偶然ですよね」
「部屋番号とか分かる?」
瞬間移動するために場所を尋ねる菫子。その時、背後から声をかけられる。振り向くと黒のワンピースを着た女生徒が立っていた。
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