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graveyard

 「逸話?」


 董子は疑念を込めて聞き返す。すると、霊夢の後ろを歩いていた魔理沙が自虐的な調子で霊夢に話しかける。


 「白黒の魔女と紅白の巫女、人呼んで慶弔コンビだったか?」


 「昔の話よ」


  「だな、コンビなら私は縛られちゃいないぜ」


 一蹴する霊夢。皮肉を垂れる魔理沙。微妙な空気が流れる。そして、一行は社長室へと到着する。


 「入りなさい」


 青娥が扉をノックし、入室の許可を得るよりも早く扉の向こうから許可を出す声が聞こえた。


 「邪魔するわよ」


 「よく来たわね、霊夢」


 霊夢たちが入室すると同時に背を向けていた女性が椅子を回転させてこちらを向く。シルクハットを被り、サングラスをかけた小柄な女性。首からはジャラジャラと音がしそうなほど大量のアクセサリーをぶら下げており、片手にジュリ扇を持っている。更に紫のジャケットを羽織り、5本の指すべてに宝石の嵌められた指輪をつけている。成金を絵に描いたような格好だ。


 「後ろの奴らは初めて見る顔ね、私の名前は依神女苑」


 「ご丁寧にどうも、さっそく本題に入っても構わないかしら?」


 「……そこの白黒がスカーレット財閥に盗みに入るも『聖杯』について書かれた文書の入手に失敗。依頼主を聞き出そうとするも本人は大した情報を持っていなかった。そこで依頼主に関する情報を得るためにここを訪ねてきた。間違いないかしら?」


 「ええ、報酬は魔理沙(コイツ)の身柄よ」


 「悪くないわね。ただ、この件はややこしいわよ」


 そう言いつつも女苑はニヤニヤと笑っている。そして、女苑が姉さん、と呼びかける霊夢たちは一斉に女苑が声をかけた方を向く。そこにはヨレヨレの薄汚れたパーカーと生地が擦り減り、透けかけているスカートのみを着た青髪の女性が三角座りしていた。


 「なーにー? 女苑」


 「そこの棚にあるgraveyardの資料取って頂戴」


 「えー、めんどくさい」


 「取ってくれたらお煎餅あげるわよ」


 「こちらが資料です、社長」


 女苑に態度が二転三転する青髪の女性。資料と引き換えに煎餅を受け取った彼女だが、すぐにすっ転んで受け取った煎餅を粉砕してしまった。煎餅だったものの前に突っ伏して泣く女性。一連の流れを見ていた魔理沙が呆れたように女苑へ尋ねる。


 「紫苑の【債務(エゴイスト)】はまだ制御出来てないのか?」


 女苑は額に手を当て、制御も何も自分含めて能力の対象だからどうしようもないのよ、と返す。


 「姉さんのことは一旦忘れて本題に入るわ。結論から言うと依頼主はgraveyardという組織よ」


 どこかで聞いたことのある名前だと記憶を辿る董子。そして、思い出す。


 「騒音塔について麟から聞いたときに読んでた新聞ッ!」


 「3か月ほど前、指定暴力団の古明地組とぶつかってましたね」


 「これは想像以上の面倒事ね」


 唸るように呟く霊夢。


 「だから言ったでしょ、この件はややこしいって」


 そう言いながら女苑は1枚の書類を霊夢に手渡す。董子たちがのぞき込むとそこにはgraveyardのメンバーが列挙されていた。


 「ボスは不明、構成員は十六夜咲夜、永江衣玖、比那名居天子の3名ね」


 「咲夜も? それに比那名居天子といえば比那名居財閥の元令嬢じゃない」


 「だとしたらおかしいです。比那名居財閥はスカーレット財閥が影響力を強めたことで没落したんですよ?」


 「ああ、家が没落した原因であるスカーレット財閥の専務である咲夜と天子が同じ組織に属してるのはクサいぜ」


 自分たちが持っている情報と合わせて議論する霊夢たち。何も知らない董子は議論の輪に入れない代わりに女苑へいくつか質問を投げかける。


 「ねえ、ボスについては本当に情報が無いの?」


 「ええ、この報酬で話せる情報は以上よ」


 「もっと報酬を出せば話してくれるわけ?」


 「魔理沙の身柄以上の報酬をすぐに用意することはできないわよ。用意できるなら先にせびってるわ」


 あっけらかんと言い放つ女苑。その後ろでうんうんと頷く紫苑。董子は拳を握りしめるが、霊夢に(いさ)められる。


 「真面目に相手するだけ損する相手よ。依神姉妹は誰の味方でもない、金の味方よ」


 「良く分かってるじゃない。今回の情報提供も慈善事業じゃなくビジネスなの」


 「こんな奴らに構う暇があったら今後について考えた方が有意義よ」


 霊夢は董子が拳を緩めるのを確認すると柏手を打ち、自らに意識を向けさせる。


 「知ってしまった以上、見過ごすわけにはいかないわ。graveyardをぶっ潰すわよ」

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