探索その3
──騒音塔。三階。
三階も一階や二階と大差ない。だが、階段だけではなく吹き抜けによっても三、四、五階は繋がっているらしい。菫子は階段ではなく吹き抜けを利用して三階から五階へ移動しようとする。
「もはや洋風以外に規則性が無いわね、この塔」
菫子は念力を使って麟と共に五階を目指そうとする。だが、五階から落下してきた巨大なシャンデリアが二人を歓迎する。菫子はすぐさま麟と自分を念力で突き飛ばす。落下してきたシャンデリアが地面に衝突する。同時にガラスが衝撃によって粉砕する音が三階に響き渡る。飛散するガラス片をマントで防ぐ菫子。
「まさかシャンデリアが降ってくるとはね」
服に着いた埃をはたき落としながら菫子は呟く。同意する麟。演奏は相変わらず上階から聞こえてくる。だが、一階にいたときよりも盛り上がっているように思える。恐らく、演奏している曲が終わりに近づいているのだろう。
「マズイわね、演奏が終わるまでにみたいな条件だったら閉じ込められる」
「ええ。急ぎましょう、菫子さん」
飛翔する二人。空中を飛び交う家具を掻い潜り、四階を通過する。不意に物がぶつかり合う音が聞こえた。菫子は何げなく、下へと視線を向ける。
「噓でしょ……」
思わず呟く。ゆっくりと下を見る麟。視線の先にあったもの。それは三階にあった家具が一塊になった何かだった。
「ヒッ!」
麟の口から悲鳴が上がる。迫りくる家具の津波。それを菫子は発火能力で焼き払おうとする。だが、不意に視界が薄暗くなる。迫りくる不協和音。上を見上げる。
「なッ! グランドピアノッ!?」
シャンデリアと同じようにグランドピアノが降ってきた。菫子は念力でグランドピアノを下から迫る家具の津波に叩きつける。けたたましい音と共に粉砕されるピアノ。黒い津波を構成していた家具もピアノとの衝突によって砕け散る。間髪入れず、ブーメランのように回転する絵画が飛来する。それらを発火能力で焼き尽くす。
「まだ着かないのッ!?」
肩で息をしながら菫子は上を見上げる。いつの間にか四階を通り過ぎたらしく、五階の床部分が見えた。五階が近づいてきたと麟に伝える。それを聞いた麟は安堵の表情を浮かべる。だが、菫子は警戒を緩めず、速度を上げて五階を目指す。
「帰るまでが遠足ってのはこういう場面で使うべきよね」
気を紛らわすように言葉を発する菫子。突っ込んでくる本や食器、棚に対処するたびにジリジリと擦り減る集中力。限界は近い。そして、遂に到達する。
「五階よ」
「何とか辿り着けましたね」
「まあね……」
肩で息をしながらもなんとか返事をする菫子。麟はふらつきながらも立ち上がり、菫子に肩を貸す。そのまま、二人は階段を上る。塔の最上階。
──そこには三人の女性が浮いていた。
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