表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秘封俱楽部活動記録 ~Last Occultician~  作者: 伽藍堂本舗
第二章『騒音塔は眠らない』
14/53

探索その2

 ──騒音塔、二階。


 「これは......」


 物理法則を嘲笑うようにふわふわと動く家具を見た麟は呆然と虚空に問いかける。一方で菫子は面食らったものの、すぐさま似たような現象を知らないか脳内データベースを検索する。


 「ポルタ―ガイストね」


 ポルタ―ガイスト。ドイツ語で「騒がしい霊」を意味する合成語で「勝手に物が動き回る現象」を指す言葉である。勝手に音が鳴り響くラップ現象もポルターガイストに分類されることがあるそうだ。「勝手に物が動く」という現象は日本における「枕返し」のように世界各地で共通して見られる。そのため、ポルターガイストは西洋のみならず世界中で見られる怪異と言えるだろう。


 「襲ってくる気配は無いですね」


 「せめて条件が分かれば良いんだけど」


 先ほどの絵画はデタラメな軌道で菫子を追尾してきた。理由もなく追尾してくるとは思えないので何かしらの理由、あるいは条件があるはずだ。既に浮遊しているにも関わらず、自分たちを襲ってこないことからも理由ないし条件があることは確実だろう。


 「試すしかないのかなぁ?」


 菫子としては見え透いた地雷をわざわざ踏みに行きたくはない。だが、時間経過で脱出できるという希望的観測をしないのであれば行動するしかない。塔の外へ脱出する唯一の方法である瞬間移動(テレポーテ―ション)が封じられている以上、何もしなければ干からびて塵になるしかない。


 「突っ切るわよッ!」


 行動あるのみ。菫子は全力で三階へ続く階段を目指す。慌てて走り出す麟。ほぼ同時に浮遊していた家具が一斉に麟と菫子に襲い掛かる。


 「動かない方が良かったのでは?」


 麟は家具を躱しながら菫子に問いかける。


 「瞬間移動(テレポーテーション)が再び使えるようになる保証も助けが来る保証も無いのに?」


 上に行くしかないのだ。現状で出来ることは聞こえてくる演奏の正体を突き止めることくらいである。部屋内を最短距離で駆け抜け、全速力で三階へ続く階段を駆け上がる二人。菫子は駆け上がりながら持ってきた通信機器が使えないか確認する。


 「起動すらしないわね」


 菫子は通信機器を投げつけて飛んできた花瓶を叩き割る。飛び交う花瓶や絵画を躱しながら階段を上る。一階から二階へ続く階段は壁に沿ってらせん状に設置されていたが、二階から三階は踊り場のあるL字の階段で接続しているようだ。踊り場に飛び込む二人。追尾対象が急に伏せたからか、後ろから追いかけてきた陶器は踊り場の壁に激突して粉々に砕け散った。


 「休んでる暇はないわよッ!」


 菫子は陶器たちをやり過ごすとすぐさま立ち上がると悲鳴を上げる太腿に鞭打ち、階段を駆け上がる。


 「菫子さんッ!」


 麟の悲鳴。菫子は念力(サイコキネシス)で割れた陶器の破片を浮遊させ、高速で自分たちの周囲を旋回させる。竜巻のように高速で回転する陶器の破片によって飛来した家具はズタズタに引き裂かれる。


 「次は防げない、上りきるわよッ!」


 破片が地面に落ちるのを待たずに残りの段を一気に登りきる二人。勢いよく三階へと突っ込む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ