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秘封俱楽部活動記録 ~Last Occultician~  作者: 伽藍堂本舗
第二章『騒音塔は眠らない』
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騒音塔

 「噂の真偽を確かめるために敷地外へ行きたい、とな?」


 ふむ、と言いながら顎に手を添えて悩むマミゾウ。本格的な和装に身を包んでいることもあり、悩むマミゾウは非常に絵になる光景だ。黙って見守る菫子と麟。二人は学外での活動の許可を得るために顧問であるマミゾウのもとを訪れていた。


 「騒音塔、確かに生徒たちの間で噂になっておるが……」


 流石と言うべきか、学園に勤めて長いマミゾウは騒音塔の噂についても知っていた。だが、実際に調査しようとする生徒は流石に初めてのようで二つ返事とはいかないようだ。


 「うーむ、与太話の類だと思っとったが実在する可能性があるときたか」


 そう呟きながら思索を巡らせるマミゾウ。黙って待つ麟と菫子。二人が固唾を呑んで見守る中、遂にマミゾウは結論を出す。


 「構わぬ。が、気を付けるのじゃぞ?」


 「それじゃ早速向かうわよ、麟」


 「ありがとうございました、マミゾウ先生!」


 許可を得た途端、即座に調査に向かおうとする菫子。簡単にお礼を言ったあと、慌てて菫子を追う麟。二人の姿が見えなくなるとマミゾウは伸びをしてデスクへと戻る。デスクへ戻ったマミゾウは受話器を手に取り、ボタンを押す。




 * * *




 意気揚々と調査に向かった菫子だったが、ほどなくして最初の問題に突き当たる。それらしき建築物が見当たらないのだ。地図を握りしめ、辺りを歩き回る菫子。麟は既にギブアップして地面に座り込んで虚空を見つめている。


 「地図では確かにこの辺りなんだけど」


 「やっぱり実在しない、噂だけのものなんじゃないのでは?」


 「けど火の無いところに煙は立たぬっていうじゃない?」


 そう言って菫子は歩き回るのを止めて上空からの捜索に切り替える。勢いよく上昇し、菫子の姿はあっという間に見えなくなる。それをぼんやりと見つめる麟。


 「やっぱり、周囲は森ね」


 下に広がる木々を見てそう呟く菫子。視線を上げると遠くの方に住宅街が薄っすらと見える。そのままぐるりと視線を動かす。住宅街の反対側は眼下と同じ緑が広がり、東西にはさきほど見えた住宅街が続いている。


 「かまぼこ状になってるわけか、なら南にある可能性が高いわね」


 そう言って菫子は住宅街とは反対側の南側、森が広がっている方へ空中を滑るように移動する。歩いた範囲を思い浮かべ、未探索の領域に入ると同時に速度と高度を少し落とす菫子。そのままふよふよと移動しながら周囲を観察していると斜め前、南東の方角に不自然な空き地を発見する。


 「見るからに怪しいわね」


 ここに何かありますよ、と言わんばかりの空き地。あまりにも出来すぎた流れに疑念を抱く菫子だが、すぐに覚悟を決めてゆっくりと移動する。


 「ここね」


 ゆっくりと着地する菫子。実際に降り立つと空き地は想像以上に大きいことに気づく。周囲には飽きるほど見た森が広がっているが、空き地と称した範囲には木はおろか、草すら生えておらず完全な荒地になっている。


 「土砂崩れが起きるような地形でもないのにどうして?」


 地図を確認するが、範囲外らしく何もわからない。周りを警戒しながら進んでいく菫子。少し歩くと目の前に古ぼけた塔が現れた。後ずさる菫子だったが、かすかに楽器の音色が塔から聞こえたことで騒音塔だと確信する。


 「見つけたんですね」


 後ろに気配を感じて振り向くとそこには麟が居た。どうやら少し休憩してついてきたらしい。


 「引き返す手間が省けたわね」


 そう言って菫子はもう一度、塔へ視線を向ける。想像よりも数倍大きく、上層に至っては雲の間に消えている。菫子は麟に一言断りを入れて上昇する。すると塔は途中で見えなくなった。それを確認した菫子は降下する。


 「どうしましたか?」


 「どうやらこの塔、歩きじゃないと見つからないみたい」


 「何かの魔導ですかね?」


 「多分ね。さて、中に入るわよ」


 そう言って菫子は古びた扉に手をかける。

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