第4話 「思わぬ再会」
村から出発したレビィ達は次の町「イグロ」を目指して林道を歩いていた。
「レビィはイグロに行った事あるのか?」
メルが切り出した。
「はいありますよ。僕の村からもイグロには良く作物を出荷しているので何回かモンドさんが連れてってくれたんですよ。あ!そう言えばもうすぐイグロではお祭りが行われる時季ですね。」
レビィは楽しそうに答えた。
「へぇ、それはちょうど良いな。」
「はい!祭りの時だけしか無い物もあるのでできればちょっと見たいですね。あっ!そうだ」
レビィはパンと手を鳴らした
「ん?どうした。」
「もし知人に会っても僕が魔法騎士団に追われている状況なのは言わないでくれませんか、余計な心配をかけたくないので…お願いします!」
レビィは懇願する様に話した。
「まぁそういやそうだな。分かった、気を付けるよ。ところで…」
メルがピタッと足を止めた。
「もう結構歩いた気がするんだが家一軒すら見えないんだけど…あとどれぐらいで着くんだ?」
「えっと確か連れてってもらった時は馬車で行ってたからよく分からないですけどまだまだ先ですね。」
「…日が暮れるまでに着くかな、これ。」
メルはガクリと肩を落としまた歩き出した。
レビィ達がしばらく歩いていると突然林の方からガラの悪そうな3人組がレビィ達の進路を塞ぐ様に表れた。
「うわっ!な…何ですかあなた達!?」
レビィが思わず後ずさった。
「よう、ねぇちゃん達ここを通りたいんならこのドスカス様に通行料を払って貰おうじゃねぇか。」
いかにもリーダーらしき男がニヤニヤしながら斧を向けた
メルとカナンは5秒程ポカンとした後お互いを見合った。
「え?誰?ドスカス…知ってる?」
怪訝そうな表情でカナンに聞いた。
「いえ全く、大方どこか大したことのないゴロツキが粋がってるだけでしょう。」
「カナンが知らないんじゃ誰もアタシ等の中じゃ誰も知らないわなぁ、アッハッハッハ。」
メルは高笑いしながら野盗を無視して歩き出した。
「ちょうど良いや、なんか寄越せ。」
そう言うとメルは野盗に人差し指をピッと上に向けると野盗達の影が形を変え黒い拳になり3人の顎を的確に捉え、3人は声をあげる事なく倒れた。
「チッ大したもん持ってねぇなコイツ等。」
メルは倒れた野盗達の持ち物を物色しながら悪態をついた。
「最早どちらが野盗か分からないねレビィ君。」
カナンは肩をすぼめてた。
「あ…アハハ、そ…そうですね。それにしても…村の外って案外治安が悪いものなんですか?僕、そんなに村から遠くに行った事は無いんですけどこんな人達初めて見ました。」
「まぁここら辺りではこういうのは珍しいかな。今俺達がいるこの国は平和すぎるくらいだから。」
「そうなんですか?」
「あぁそうさ、正直君の村の鍛冶屋を見た時は驚いたよ。農具とか日用品はちゃんとした物が置いてあるのに武器としてしか使わない物は全く置いてなかったからね。他所の国ならあり得ないよ。」
「へぇ~そうなんですね。…ところでさっきから思ってたんですけどカナンさんってすごい物知りなんですか?」
「カナンは世情を調べんのが好きだから結構な情報通だぞ。だから魔法以外のことはアタシじゃなくてカナンに聞いた方が良いぞ〜。」
レビィの問に野盗達を物色し終えたメルが代わりに答えた。
「…確かに俺は世情を調べるのが好きですけどそれ以上に師匠が世間については全然興味が無いからって世間知らずでこれまで散々苦労したからそうならざるを得なかったんですけど…。」
カナンはジト目でため息を吐いた。
「それよりも早く行きましょうよ。このままじゃ本当に日が暮れちゃいますよ。」
「ん、そうだな。日があるうちに着きたいもんだな。」
しかしメルの願いも虚しく結局イグロにたどり着いたのは夜だった。
「結局夜になっちまったな。まぁでもこんな夜中でも結構賑やかじゃないか。早速買い物と行きたいがまずは今晩の宿をとらんとな。」
3人は街の入り口近くにあった宿屋に立ち寄った。
「どうだった?」
宿屋から出てきたカナンは首を横に振った。
「ん~駄目かぁ〜、まぁまだ一軒目だし次だ次。」
そんな調子で一軒、また一軒と宿屋を回ったが全て満室だった。
「ここも駄目…しっかし何でこんなにもどこの宿屋も一杯一杯なんだ?」
「ここに来る前にレビィ君が言ってたじゃないですか。もうすぐお祭りだって。それで色んな所から人が集まってるんでしょう。」
「成る程そう言う事か。はぁ~予定通り出発出来ていたらこんな夜中に宿探しすることも無かったのになぁ〜。なぁレビィ、せめて宿じゃ無くてもいいからさ、どっか野宿しても大丈夫な所とか無いのか?」
「すいません…最後に来たのも大分前ですしそもそも来た時は必ず日帰りだったのそう言った事ははよく分かんないです。」
「あ〜そっか〜、まぁいつまでもここにいてもしょうが無いしひとまずメシでも食いにこうや。宿探しはそれからだ。」
3人はメルの提案で近くの店に行く事にした。
「とりあえずあの店でいっか。」
メルが指さした店に向かって歩いていると路地裏から女性が唐突に出てきてレビィとぶつかってしまった。
「きゃっ!」
女性は思わず倒れてしまった。女性の左腕には三角巾がしてあった。
「あっすいません!大丈夫ですか!?」
レビィが慌てて女性を起こす。
「えぇ大丈夫、こちらこそごめんなさいね。ってレビィ!?レビィじゃない!」
女性は声を上げてレビィに抱きついた。
「え?…あ!ジェーンさん!?えっと…その腕どうしたんですか!?」
「あなたこそどうしたのその格好、まるで魔法使いじゃない!」
ジェーンと呼ばれた女性とレビィはお互い質問だらけで会話が成立していなかった。
「あ〜レビィ、その人は知り合いか?」
見かねたメルがレビィの頭をポンと叩き2人の間に割って入った。
「あ、はい。ジェーンさんは元々僕の村の出身で少し前にここの猟師さんに嫁いだんです。
ジェーンさん、この人はメルさんとカナンさん、メルさんは僕の…師匠様です。僕…魔法使いになったんです。」
「え!?嘘!?レビィ、あなた本当に魔法使いになれたの!?良かったじゃな〜い!」
ジェーンは再びレビィに抱きついた。
「もう…ジェーンさん、いちいち抱きつかないでくださいよ。」
レビィがジェーンを引きはがした。
「あの、ジェーンさん、本当にその腕どうしたんですか?」
「あぁこれ?いやぁ実は前に熊に襲われちゃってね。」
ジェーンはサラリと恐ろしい事を言った。
「えぇっ!?大丈夫だったんですか!?」
「うん。森の中に夕飯に使う山菜や香草を取りに行ったら運悪く出くわしてね。見ての通り左腕はしばらく使えないけどそれ以外は何とも無いよ。」
「そ…そうですか…良かったぁ。」
レビィはホッと胸をなで下ろした。
「でもよく無事でしたね。一体どうやって助かったんですか?」
「それがもうホントに偶然なんだけどね、丁度その時街に魔法騎士団が来ててね、それで助けてもらったのよ。」
「ん?」
メルの眉がピクリと反応した。
「師匠、ひょっとして朝に来た魔法騎士団達は…」
カナンが小声でメルに話しかけた。
「そうゆう事だろうな。しかしなぜここに奴らは来たんだ?」
「案外…休暇だったりして…」
「まっさかぁ、休暇でもあんな人数連れてこんだろ。」
「あぁ…それもそうですね。益々理由が分かりませんね。」
メルとカナンは両者とも腕を組み唸っていた。一方唸る2人に気付く事なくレビィとジェーンは話し込んでいた。
「ところでジェーンさんは今何してたんですか?」
「私?私は旦那と買い物に来てたんだけどはぐれちゃったの。」
「えぇっ!?大丈夫なんですかそれ!?」
「大丈夫よぉ。あの人しっかりしてるからすぐに見つけてくれるわよ。」
「そう言う問題じゃ…」
2人が話しているとジェーンの出てきた路地裏から若い男が慌ただしく出てきた。
「あっ!居た!ジェーン!怪我だってしてるんだからはぐれるなって言ったじゃないか!」
「あっほら来た。」
息を切らしている男に対してジェーンはのほほんと応えた。
「ほら来たじゃ無いだろ…もう…旅人さん達にまで迷惑かけて…ん?」
男はレビィを見た。
「君は確か結婚式の時に居た…えっと…レビィ君だったかな?」
「あっはい、お久しぶりです。リュードさん。」
レビィがペコリと頭を下げた。
「あれ?その格好…ジェーン、君の村に魔法使いって居なかったと思うんだけど。」
リュードと呼ばれた男はジェーンの方を向いた。
「そう!レビィは私が村を出てたらいつの間にか魔法使いになってたのよ!どう?すごいでしょう!」
ジェーンはムフーと鼻を高くし胸を張った。
「何で君が威張るんだ…まぁそこはさて置きすごいじゃないかレビィ君!じゃあ後ろの人達は君の師匠かな。」
「はい!メルさんとカナンさんです。」
レビィに紹介されるとメルとカナンは手を出しリュードと握手を交わした。
「よろしく、リュードだ。妻が迷惑を掛けたね。それにしても魔法使いって初めて見るけど2人で1人を教えるものなのかい?」
「あっそれは…その…」
レビィの目は泳いでいた。
「そんな事は良いじゃないリュード、それよりもさ、レビィ達は宿を探してるんだって。」
運良くジェーンが話題を変えてくれた。
「え〜この時期でかい?もうどこも空いてないんじゃないかな。」
「でしょう?だからウチに泊めてあげようよ。」
「おっ?」
話がいい方に向きそうなのでメルが思わず声を小さく上げた
「いやぁそうしたいのは山々だけど寝具は僕らの分しかないよ。」
「別に寝具ぐらいならアタシ等は自分の分があるから屋根さえあればどこでも大丈夫だぞ。」
メルはジェーンとリュードの会話にグイッと割って入った。
「師匠…少しは遠慮して下さい。」
カナンはため息を吐きメルの肩をポンと叩いた。
「え〜?良いじゃんかよぉ〜、このままウロチョロしたって空いてる宿はもう見つかんねぇって。」
メルはいじけた子供の様だった。
「決まりね。じゃあ夕飯もウチで食べましょうよ。腕によりをかけて作るわよー!…リュードが。」
「…まぁ、君は怪我してるしね。」
そうして3人はジェーンとリュードの家にお邪魔することになった。
「みんな好きなだけくつろいでくれ。じゃあ僕は夕飯を作るよ。」
そう言うとリュードは台所へ向かい窯に薪を入れた。
「あれ?火打ち石はどこにやったかな?そっちには無いよね?」
リュードは火打ち石を探すが台所のどこにも見つからなかった。
すると椅子に座っていたレビィが火打ち石を見つけた。
「あっリュードさん。これ…」
レビィが火打ち石を取ろうとするとそれを制止する様にメルが自身の手をレビィの手に乗せた。
「えっと…師匠?」
メルはニヤリと笑っていた。
「リュード、火打ち石が見つかんないんだろ?じゃあせっかくだからレビィの魔法で着けてもらったらどうだ?」
「え?…えぇ!?」
レビィが目を丸くした。
「おおっ、そんな事が出来るのか。じゃあお願いしようかな。」
「えっ!?私もレビィが魔法使ってるところ見たーい!」
リュードとジェーンは目を輝かせていた。
「だってよレビィ。」
メルは2人を味方につけニヤニヤしていた。
「そ…そんな急に言われても無理ですよ!それにもし失敗したら…」
あたふたとしているレビィの口をメルは人差し指で抑えた。
「なぁに心配はいらんさ、仮に失敗してもアタシが消火してやる。」
「そ…そう言う問題じゃ…」
「だぁ~もう!子供がそんなチマチマした事気にすんな!」
そう言うとメルはレビィの背中をバンバン叩いた。
「痛!わ…分かりましたよ。」
レビィは台所に向かいおずおずと杖を窯に向けた。
「出でよ火の玉!ファイアボール!」
杖から赤ん坊の拳程の火の玉が飛び薪に命中した。
「おぉ~!凄い!」
「本当に火の玉が出た!」
火の玉は小さかったがリュードとジェーンの2人は大いに盛り上がった。
「あ〜、盛り上がってるとこワリぃけど火が小さいから空気入れないと多分消えるぞ。」
メルは頭をポリポリかきながら横槍をさした。
「師匠、こういう時は黙ってやるのが大人ってもんですよ。」
カナンはいつの間にかふいごを手にして火に空気を送っていた。
「よし、火も点いたし後は煮込むだけだな。」
リュードは手慣れた手つきで具材を鍋に入れてジェーンの隣に座った。
「凄くいい匂いですけど何を作ってるんですか?」
鍋の方を見ながらカナンが聞いた。
「ん〜?ハトのスープだよ。」
リュードは来客用に出した菓子を食べながら答えた。
「えっ!?」
突然レビィがガタッと音を出し立ち上がった。
「うおっどうしたんだレビィ?」
メルは急に立ち上がったレビィに思わずビクッとしてしまった。
「ハトってまさかキリバトですか!?」
レビィは声を荒げていた。
「キリバト?なんだそりゃ。」
聞いた事の無い単語にメルは眉をひそめた。
「キリバトってのは要はヤマバトの一種なんだけどね、この街のすぐ近くにある森の奥地にしか居ないんだ。ここらの森は特殊でね、常に深い霧が立ちこめている森の奥地にいるからキリバトと呼ばれてるんだ。普通のヤマバトより遥かに味が良いよ。」
「へぇ~、で、それを今煮込んでんの?」
メルは鍋の方に視線を移した。
「いや、残念ながらあれは普通のヤマバトだよ。流石にこの時季にキリバトは客にも出せないよ。」
リュードは苦笑混じりに肩をすぼめた。
「出せないって…この時期は美味くないって事?」
「いや、むしろ今が一番美味しい時季なんだよ。だからお祭りとかで店を出す人達がこぞって買い求めるから言ってしまえば猟師にとっては稼ぎ時なんだ。」
リュードが喋っていると鍋の蓋がカタカタ鳴り出した。
「おっ出来上がったな。ちょっと待ってね。」
リュードは鍋を持ってきてそれぞれの器に料理を移し、パンの入ったバケットも持ってきた。
「さぁ、召し上がれ。」
「こりゃどうも、んじゃ、いっただっきま~す!」
メルがまず一口食べた。
「ん!?」
メルが一瞬固まったがすぐに子どものように料理にがっついた。
「おぉっ!こりゃ美味いなぁカナン!レビィ!」
「はい!とっても!」
「師匠、分かりましたからもう少し落ち着いて食べて下さいよ。」
カナンは持っていた手拭いでメルの頬を拭いた。
「良かった、お気に召したみたいだね。」
リュードはホッと胸を撫でた。
「しっかしヤマバトでこんな美味いんならさっき言ってたキリバトならもっと美味いんかな。明日からどうにか宿を見つけて祭りが始まるまでこの町にいようかな。」
「師匠…分かってるでしょう、あまり長くはいれませんよ。」
楽観的すぎるメルにカナンはため息混じりで話した。
「え〜。大丈夫だろ〜ちょっとぐらい良いだろ〜ケチ〜。」
メルの方は駄々をこねる様に言った。
「あ〜2人共。多分それは無理じゃないかな。」
2人の会話にリュードが割り込んだ。
「ん?宿なら1日中探せば流石にあるんじゃないか。」
「あ、いや宿の話じゃなくてキリバトの方だよ。」
「ん?どういうことだ?」
メルは首を傾げた。
「実は今年はキリバトが全く獲れていないんだ。というのも最近森の様子がどうもおかしいんだ。」
「おかしい?」
「うん、森の奥地に入っていくとどんどん霧が濃くなっていく。これ自体は珍しくないんだけどそのままどんどん進んでいくと段々と頭がボーッとしてきて気付いたら森の出口に着いてしまうんだ。そのせいでまともにキリバト狩りができないんだ。」
「なんだか…怖い話ですね。」
レビィは少し怯えていた
「師匠、今の話…」
カナンは器を一旦置きメルの方を見た。
「あぁ…間違いないな。まさかあいつがここに居るとはな。」
メルはまたニヤリと笑みを浮かべると空になった器を置いた。
「なぁその話、アタシ等に任せてくれないか。おそらくだがその原因を解決出来るぞ。」
「え?いやいや悪いよ。気持ちは嬉しいけど危険かもしれないし。」
「なぁにこれでも修羅場はくぐって来てるし平気さ。それに一宿一飯の恩って事でさ。な?お前もそれなら良いだろ?カナン。」
「まぁ…そう言う事なら。」
カナンは納得していたが何か言いたげでもあった。
「まぁ…そこまで言うなら…うん、分かったよ。じゃあ明日朝になったら森に案内するよ。でも少しでも危なくなったらすぐに引き返してくれ。それでいいね?」
あまり納得している様子では無かったがどうしようもないのも事実なのでリュードは渋々頼む事にした。
「そうと決まれば早めに寝た方が良さそうだな。」
「それもそうだね。」
全員は食器を手早く片付け夫婦は寝室に、メル達は持ってきた寝具をリビングの床に敷いた。
「んじゃ、おやすみ〜。」
3人はメルを真ん中に川の字になる様に横になった。
「…あの、メルさん。さっき言ってた原因って一体何なんですか?」
レビィが体をメルの方の方に向けた。
「………かぁ」
メルの口から消え入りそうな声が聞こえた。
「…?メルさん?」
少し様子が変だと思ったレビィは体を起こした。
「…もう寝てる。」
メルは小さくいびきをかいていた。
「フッ凄いだろ?師匠の早寝。」
その様子を見ていたカナンが鼻で笑っていた。
「まぁ気になるのも分かるけどさ、明日になったらいずれ分かることだから今は休みなよ。多分明日は忙しくなるから。」
「は…はい。」
レビィは結局原因が何なのかわからずモヤモヤを抱えたままであったが歩き疲れたのかすぐに眠りにつき夜が明けた。
朝になると3人はリュードの案内で例の森の中に入っていった。
「あの、リュードさん。」
少し歩くとカナンが切り出した。
「森に入ってから気になったてたんですけど木に何か模様と数字がちょくちょく描いてあったんですけどあれは何ですか?」
「ん、あれ?あれは村への目印だよ。この森の至る所にあって最悪霧で道が分からなくなっても迷わず帰れる様にしてあるんだ。数字は今ここが森のどこら辺かを示してるよ。」
「あぁ成る程、そう言うことですか。」
「さぁここら辺から段々と霧が濃くなるから足元に注意してくれ。」
リュードの言葉通り霧はどんどん濃くなっていった。
「あと少しで森の真ん中だ。」
「ん、リュードさんよ、そこで止まってくれ。」
メルに呼び止められ先頭を歩いていたリュードが足を止めた。
「どうしたんだい?」
「まぁちょっと下がっててくれよ。」
メルがリュードの前に立つと何も無い空間に手を伸ばし手をギュッと握った。
「せぇのぉ!」
メルが思いっきり手を振り下ろすとバリバリと木の皮がめくれた様な音がした。
「な…何をしたんだ?」
「結界の一部を壊したのさ。」
メルの手には白いボロ切れの様なものが握られていた。
「け…結界?」
レビィが首を傾げた。
「そう、結界。まぁ簡単な言えば魔法で作った縄張りだな。」
「え?じゃあ今までのは魔法が絡んでたってことなのかい?」
リュードの言葉にメルは頷いた。
「ちなみにここをそのまま通るととどうなるか気になるか?レビィ。」
「え?いや別に…」
「まぁそう言うなよ。」
レビィが答えた直後にメルに腕を引っ張られてメルの横に移動させられた。
「わわっ!何するんですかメルさん。」
レビィがよたつきながらも前を向くが誰も居なかった。
「あ…あれ?メルさん?」
周りを見渡すもメルどころかカナンもリュードも居なかった。
「メルさん!?カナンさん!?リュードさん!?」
レビィは辺りを見渡しながら3人の名前を大声で呼んだが返事は帰ってこずそれどころか何故かレビィの頭がボーッとしてきた。
「うっ!なんだこれ…はっ!これがリュードさんの言ってた現象か!」
異変に気付きなんとか意識を保とうとするがレビィの意識はどんどん消えていった。
「あれ?僕は…何をしにここへきたんだ?ここは…どこだろう。そうだ、帰らなきゃ…」
レビィの視界がどんどん真っ白になっていき足が自然と今まで進んでいた方向の真逆へ歩き出した。
「…ビィ…おいレビィ!」
女性の声が聞こえたかと思うとレビィの頭に何かで叩かれた様な痛みが走った。
「痛っ!」
痛みで我に返ったレビィが顔を上げるとメルがレビィの杖を持って肩をトントンしていた。
「いやぁ悪いねぇ。実際に体験した方が分かりやすいとおもってな。どうだ、意識ははっきりしてるか?」
「え?あっはい。」
「それは良し。しっかし相変わらずアイツの魔法は流石だな。」
メルは森の奥に視線を向けて杖をレビィに返した。
「あの…メルさんはこの結界を作った人を知ってるんですか?」
「ん?あぁ知ってるよ。この魔法を使えるのはアイツだけだからな。今頃アタシ達の事を見張ってるんじゃないかな。」
「え!?近くにいるんですか!?」
レビィは周りを見渡した。
「あぁ違う違う、そう言う事じゃなくてな。結界ってのは術者にとっては体の一部みたいなもんでな、結界内なら異常は直ぐに探知されるだろうな。」
「それなら警戒した方がいいんじゃ…もし攻撃とかされたら…」
「なぁに大丈夫だって。もしアイツに敵意があったなら今頃この中で誰か一人は死んでるよ。アッハッハ!」
身震いするレビィを励ますためメルは豪快に笑い飛ばすが余計に怖がらせていた。
「おっあれかな。ん?誰だあれ。」
メルが見る方向には森の中にポツンと家が建っており魔法使いの格好の少女が立っていた。きれいな金髪で目は髪の毛で完全に隠れていた。
「あっ!は…始めまして!皆さん。私はテトラと申します。師匠の言伝でここで待っていました。」
テトラと名乗った少女がたどたどしく頭を少し下げた。どうやらかなり緊張している様だ。
「あぁこりゃどうも丁寧に…って、ん!?今師匠って言ったか!?」
メルも少し頭を下げるもすぐに少女に食いつく様に顔を近づけた。
「は…はい、そうですけど…」
「にわかに信じられんな、アイツが弟子をとるなんて…まぁ良いや、それより言伝って?」
「実は…その…ただ一言だけ…全員帰れ。と言う様に言われました。」
その一言に全員は静まり返ってしまった。
なんとなく一話一万字以内に収めたいと思ってしまい次の話にまわしたいと思ってるんですけどお話の区切りどころが全く分かんないッピ。だからすげぇ中途半端に終わってしまってるッピ。こりゃ駄目だぁ。




