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姉と弟①

『聖女』は聖女から生まれてくるわけではない。

おおよそ30年に一度村で妊娠した母親の胎内にいる胎児の性別が女性であった場合に、幸か不幸か偶々『聖女』として生まれてくるのだ。


身体に特徴を持って生まれてくるわけではないので生まれてすぐに『聖女』とわかるわけではない。

精神面での聖女の特徴が現れるのは大体4,5歳ごろ、肉体的な特徴とその性質が現れるのは7歳前後だ。

主な精神的な特徴は『希薄な感情』『特定のモノへの異常な執着』そして『それ以外のモノへの興味の欠如』。

この年代の子供であれば『特定の毛布や枕がなければ眠らない』『所有物に対して執着する』『自分の興味のあること以外を行わない』など特別なことではない。

つまり、『聖女』かどうかは7歳まで非常に判別がつきにくい。


7歳になれば髪が白く染まり始めるので一目で『聖女』であることが分かるが、逆に言えばそれまで気づかれることは殆どない。


そしてマリアねぇさんが生まれたのは、前回の聖女生誕から27年後、そして僕が生まれたのが30年後のことであった。

30年よりは少し足りず聖女が生まれるまでは少し早いとされていたし、お隣さんであったリズおばさんが3歳であったマリアねぇさんを連れて、生まれたばかりの僕を見せ、

「この子がお隣のクライス君だよ。マリアはおねぇちゃんだからね。『弟』だと思って優しくするんだよ」

なんて言ってしまったことは誰にも責められないだろう。

ご近所付き合いの一環であったし、聖女が生まれるのは僕の年代だと思われていた。1年程度前後することはあっても3年ずれることは今までなかったのだ。


「おねぇちゃん…マリアはクライスのおねぇちゃん…」

と幼いマリアねぇさんが繰り返し呟いていたことを後に聞かされることになるが、僕がその場所に居たって「幼い女の子がお姉さんの自覚を持った微笑ましいシーン」くらいにしか思えなかっただろう。

仮にその場所の誰かがマリアねぇさんが『聖女』であると気が付いてももう遅かった。

マリアねぇさんは『クライスの姉であること』に執着してしまった。


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