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一般人クライスの追放②

何故か4pt入ってたし、仕事も無くなったのでぼちぼち書きます

「…クライス…済まない。今回も君を追放してやることができなかった…」


ブレイドが絞り出すように言葉を発した。


「ううん、ありがとう。ブレイド。あ、いやブレイド様か!村人が人族の第2王子様に向かって呼び捨ては不味いもんね!」

僕はお礼を言い、場の空気を和ませようと少しおちゃらけたように言う。


「ははは…君は追放が失敗すると、いつもそのネタを掘り返すね…。そろそろ勘弁してくれよ。

君に高圧的にあたったのなんて本当にパーティ結成の最初の最初だけじゃないか…」

ブレイドが苦笑する。


「はは、そうだね。『おい、なんでただの村人がこのパーティに参加している。聖女の弟だか何だか知らないが、即刻出ていけ、国民として労働と納税の義務があるだろう』なんて言われたのが懐かしいよ。」

僕も苦笑し、ブレイドに返す。本当に懐かしい…もう3年も前か。村のみんなは元気だろうか…。


「それに、君にあたったといえば、ベティもイグスだってそうだろう?」

水を向けられたベティは恥ずかしそうに帽子のつばを下げ、イグスは斜め上を向き頬をかく。


「仕方ないじゃないですか。私の目的の為には勇者パーティの任務は絶対にしくじることができません。それに…申し訳ありませんが足手まといだと思っているのは今でも変わりませんよ…。クライス、あなたはやはりパーティを去るべきです。後方確認が主な役割とは言え、戦闘能力に秀でているとは言えません。バックアタックを決められてしまえば恐らく生き残れはしないでしょう。」

やはり、分かりきっている事とはいえ、『お前は足手纏い』と伝えるのはバツが悪いのかベティはつばを下げ、僕と目を合わせないように言う。


「それに関しては私も同意見だ。今までは後方からの攻撃なぞ来ないよう策を練り、誘き出し、なるだけ後方の安全に気を使いながらの戦闘であったが、人族領で報告のあった魔物は大方狩り終えた。ここから先は獣人領、エルフ領など視界の開けている場所が少ない状況での戦闘が多くなる。もう後方の安全に気を配って戦闘を開始するという訳にもいかないからな」

イグスが真剣な様子で言う。


「そうだね、僕もそう思う。僕は絶対に場違いな場所に居る。

平民の出ながら上級貴族に匹敵する魔力量と幼少から現在に至るまで魔術の研鑽に人生を捧げてきた魔法使い。生まれながらにして人民を守るため一日だって剣の鍛錬を欠かしてこなかった王子様とその従者。

比べて僕は『聖女の生まれる村』で13歳になるまで遊びと薪拾い、小動物を狩ることしかしてこなかったただの村人だ。何か才能に恵まれているわけでもない。

…おまけに言えば『聖女マリアンヌの弟』なんかでもない。

多分旅を続けていれば遅かれ早かれ死んじゃうんだと思う。」

…ベティは『バックアタックをくらえばひとたまりもないだろう』なんて言ったが、バックアタックを食らうまでもなく前衛のブレイドとイグスが一体でも魔物を取りこぼせば僕は恐らく死ぬのだ。

ベティは戦闘中、魔力循環で身体強化をしており、マリアねぇさんは『魔物に襲われない』。

では一番殺しやすいのは誰か?…正解。僕こと『村人クライス』だ。

ここまで命を繋げたのは、前衛二人が馬鹿みたいに強く、そして弱い者を見捨てない高潔さを持っていたからだ。

どんなに傷つこうと絶対に抜けさせない。自分の後ろに居るものを傷つけさせないという気迫に満ちた背中を僕は知っている。3年物間後ろで見続けてきた。砕けた口調で会話することを許されているものの、彼らは身分や信念、高潔な精神を持ち、本来であれば村人などが軽々しく口を聞いて良い相手ではないのだ。


「そういえばマリアンヌは何故あなたを『弟』と呼ぶのです?血のつながりはないのでしょう?今までにも何度か聞こうと思いましたが、この話をするとマリアンヌがなんというか…おかしくなるので避けてきましたが、寝てしまえば朝まで起きないのでしょう?良かったら話してくれませんか。今後の『クライス追放計画』の役に立つかもしれませんし。」

…そうか、そういえばベティは何故マリアねぇさんが僕を『弟』と認識しているのか知らないんだった。


「いいよ、別に特別な秘密ってわけじゃないし。それに、マリアねぇさんが起きてるときに僕が『弟』じゃないなんて否定するような話をすると、なんというか怖いしね」

マリアねぇさんは僕を『弟』と認識しており、他人に否定されるとその相手に対して敵対的な行動を取る。


僕が直接否定しようものなら、僕が『マリアねぇさんが姉である』ことを認める発言をするまで昼夜問わず「おねぇちゃん」「ねぇさん」「クライスは私の弟」これ以外の発言をしなくなり、僕にぴったりくっついて離れなくなる。正直こうなるととても怖い。何せ休みなく言われ続けるのだ。そして僕ではマリアねぇさんを振り切って逃げることも、力ずくでどうにかすることもできない。


僕は改めてマリアねぇさんが僕を『弟』と認識するのかを語ることにした。



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