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一般人クライスの追放①

「クライス、なぜここに皆を集めているかわかるか?」

静かな宿の一室、落ち着きのあるこの空間でクライスこと僕に勇者であるブレイドが言う。


「…なんとなく察しはついてるよ」

僕を除いて集められた4人そして僕を見つめる6つの目。一様に険しい目をしている。

…残る1人の2つの目は僕ではなく、テーブルの上にあるカップのお茶に向けられている。

まるで、『ただ座っていてくれと言われたからここに居るだけ』。話の内容になど興味はない。

そんな心境を全身で表しているようにも見える。


「わかっているならば話は早い。クライス。君をパーティから追放する」


「…わかっ「いいえ、ダメです」」

同意しようとした僕の声は聖女マリアンヌの否定の声にかき消される。


「マリアンヌ…なぜダメなのか理由を教えてくれないかい?」

ブレイドが務めて穏やかに問う。


「むしろ私のほうが聞きたいです。どうしてクライスを追放するのですか?」

マリアンヌが心底理解ができないという風に聞き返す。


「どうしても何も決まっているじゃないですか。彼は弱すぎます。

この先で命を落とす可能性は決して低くない。私たちだっていつまでも彼を守っていられるかわかりません。」

魔法使いのベティが言う。


「クライスの配置は最後衛のはず。そこまで突破されてしまうのはこのパーティが壊滅した時ではないでしょうか?」


「とは言っても、前衛を抜けられて後衛まで攻撃が届くことだって珍しくはないだろう?

それに基本的にはクライスは戦闘に参加していない。武器が弓で名人という訳でもないしな。動き回る味方のいる状況で撃てず、戦闘では正直役には立っていない。ブレイドのいう通り『弱すぎる』というのも間違ってはいないだろう?」

パーティの盾であるガードナーのイグスが言う。

…そこまで弓が下手なわけではないけれど、撃ちにくいと感じるのは確かなので何も言わないでおく。


「クライスの役割は後方の監視のはず。打ち漏らしは前衛の力量不足でしょう。

話合うならば、彼の追放ではなく人員の増強をすべきです。」


「…それを言われると耳が痛いな。もっと修練に励むとするよ。

だがクライスの力量不足は紛れもない事実だ。正直無視はできない。

クライスには近いうちにパーティを出て行ってもらうつもりだ。」

ブレイドが自分の力量不足を認めながらも、僕の追放は決定事項だと言い放つ。

彼にしてみれば20年に近い歳月を剣に捧げて生きてきている。力量の不足を剣を振るわない女に言われることは業腹だっただろう。

それでも彼は穏やかさを崩さなかった。


「ではクライスと一緒に私もパーティを抜けます」

マリアンヌはパーティに未練など何もないかのように返す。


「「マリアンヌ!」」

ブレイドとベティが慌てたように立ち上がった。


「弟がパーティを抜けるのでしょう?

では、姉である私も一緒に抜けることにします。弟が心配ですからね。

何か問題でもありますか?」


「問題もなにも問題しかないだろう。君の脱退を認めるわけにはいかない。」


「では、私もクライスの追放を認めるわけにはいきません。

…話は以上ですか?平行線になりそうであれば、そろそろ眠くなってきたので私は部屋に戻りたいと思います。」


「…わかった。マリアンヌは部屋に戻るといい」


「わかりました。クライス、行きましょう?」


「…僕はもう少しみんなと話し合ってみるよ。

姉さんは先に休んでて。」


「わかりました。暴力を振るわれたりしたらちゃんと言うのですよ?」


「みんなそんなことはしないよ。お休み、マリアねぇさん」


「えぇ、おやすみなさいクライス」


ガチャリ、バタンとマリアンヌがドアを開け、去っていく音が聞こえる。


「…クライス…済まない。今回も君を追放してやることができなかった…」

ブレイドが絞り出すように言葉を発した。


初めての投稿です。誰にも見られないかもしれませんがよろしくお願いします。

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