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01-03-21
夜が苦しくなくなった。夜を窮屈と感じる憂い深き少年少女の気持ちに共感する事はもう無いのかもしれない。そう表現してみると唐突な老いを感じるようでも、他とは違うんだという虚無な優越感に浸るようでもあり、少し複雑な気分になる。この時間帯を重々しく見ていた頃の自分は、今思い返してみると、世界そのものが暗いように錯覚していたものだ。というよりも、暗い気分に呼応してさらに夜が深まるみたいな、自己中心的な錯覚であった。
今は違う。どう変わったのかというと、苦しいのは夜だけに限らなくなった。人間関係だとか、気持ちによって暗さが変わるのではなく、時間とか預金残高、そういった社会的な制限が時間を選ばずに襲うようになったのだ。25日払いの1ヶ月単位で気分の周期は回り、まるで女性の抱える生理みたいだな、と無責任に考えて自嘲したりもしている。
故に夜は苦しくなくなった。代わりに、人生が苦しい。