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12-15-20
気付けば虚空を見つめていた。欲する物にこそ目が向くならば、やはり僕は虚無を求めているのだった。
彼は自分の心がよく見える人間である。言い換えれば自己中心的で、利己的で、周りを見ない奴。他人に目を向けないで自分ばかりを見ている分、心情の機微には敏感で、自身が何を求めているかをよく理解していた。そういう男だった。
成人式ムード一色で始まった一年が終わろうとしていた。堂々と酒が飲めるようになり、友人同士で集まる度に酒を飲むような浮ついた年でしかなかったが、それなりに変化の大きい年でもあった。海外留学を終えて日本に帰ってきた事が一番の変化であろうか。六年という些か留学には長すぎる期間が、日本人にとってのただの帰省と呼べない程に彼の変化の差を広げてしまったようだ。八月に帰国し、義兄の伝で土建会社に入社した事も環境の変化の一つとして起因している。




