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07-27-20
あからさまな咳払い。初老の現場監督が鳴らす音には、最早古典的とすら言える響きがあった。人材派遣で訪れた現場、その休憩中、僕は将来の夢を探して悶々としていた。少なくとも、この工場の中に重ねられる将来像は見当たらなくて、枯渇した想像力で眼鏡をかけた自分を思い描くくらいだった。楽しそうではないから、工場関連職は選択肢から外した。
なら僕は何処で楽しくやっていけるだろうかと、妄想していく日々の繰り返し。研究職、監督職、趣向を変えて小説家なんかも面白そうだ。しがない現場仕事の作業員には夢ですら勿体ないと、切り捨てる




