やっぱ異世界?
前作も引き続き連載はします。頑張ります。
赤井直人なんて平凡な名前、クラスで可もなく不可もなくな立ち位置で、友達もそこそこ。別に苦労はないがこれといった特技はない。趣味は読書…と言っていいだろうか。無料のネット小説漁りだが。特に世界に恨みはないがありがたみもない。だからこそ授業中はテロリスト撃退やいきなり学園ハーレム、異世界転生のような妄想に明け暮れたりする。このままそのどの妄想も当たり前に叶うことがなく一生を生きていくのだろうと、そう思っていた。
……。
どのくらい寝たのだろうか。フラフラと頭が重い。寝付きはいいほうだが起きるのはめっぽう弱い。
慣れ親しんだ部屋ですら布団がないと寒気がまるで外のように感じる。というか、ものすごく寒い。
間違えて冷房をつけて寝てしまったのだろうか。そもそもいつ自分は寝付いたのか。寝ぼけ眼を擦り正面にあるはずの壁掛け時計を確認しようとする。
…………
………………?
時計がない。と言うより壁がない。辺り一面葉、葉、葉、たまに青々とした空。
「…?」
もう一度ちゃんと目を擦る。夢を夢と認識できる人間は少ないらしい。その少ない中の1部に晴れて仲間入りしたのだろうか。
いや、そんなことはないと否定するように下から部屋の中でなら吹くはずのない風が突き抜けてくる。
下……?
恐る恐る自分の「下」を覗き込んでみる。
「うわあああああ!」
自分は、木の枝というか木の上に乗っていたのだ。間違いない、落ちたら死ぬ。
なんでだ、どうしてだと考えても出てくる回答はなにもない。そもそも寝起きで夢か現かすら定かではないのに、いきなり窮地に立たされてしまっては思考の余裕など全くない。
新たな思考をめぐらしている場合ではなくなった。
(ここから、落ちないように降りなきゃ!!)
*
どうしてこんなことになったんだろうか。身一つで木の上らしき場所にいた僕は死ぬ気で枝を渡り、少しずつ降りていった。かつてないほど慎重に、息をも殺すほどに。怪我しようにも死ぬよりマシだ。怪我をするということはここが現実だと認めることになってしまうが、その事実を知ったとこでもうどうしようもない。とにかく、安全に地に足をつけることが先だ。
随分時間はかかったが生命に危機が訪れることはなく地面に足をつけることが出来た。地面は芝生のような短い草本でうまっていた。いよいよ本格的に知らない場所だ。しかも、自分が生まれ育った国かどうかも怪しい。
記憶の糸を辿ろうにも、辿れるほど記憶が残っていない。というか、数時間前のはずなのに眠る瞬間、眠る前の記憶が欠落している。
確かなのはここに来る前、意識が消える前まで家でゲームをしていたということ。日本の、ごく普通の家で、明日の学校という現実に嫌悪感を抱きながら、普通に生活をしていたということ。少なくとも家の近くにはこんな高い木に囲まれた場所なんて存在しないこと。
今僕は何ももっていない。普段ならスマホを肌身離さず持っているはずなのに。こんな異質な状況で今1番したいことはネットで自分と同じ体験をしている人がいるかどうか検索することなのに。とりあえずどうにもならない。
まあ、検索したところでヒットするのは異世界転生のネット小説だろうな、と現実逃避にも近しい想像をした。異世界転生に憧れはもっていた。しかしそれは所詮、ゆくゆくは魔女になるという事実を知らないまま魔法少女になりたいと願う女子高生のような現実を見ないただの憧れで、現実に起こられても困るだけだ。
まさか、本当に僕が最強転生賢者スライムになっている訳でもないし。
途方に暮れるしかないのだが、時間も経つと本当に最強異世界転生者になれたのでは?という気持ちがわかないでもない。そうと思わなければやっていけないと脳が判断しただけかもしれない。
「本当に異世界転生ならステータスとかあるのかな……。」
「ステータス、開け!」
最近読んだ小説にはステータスと呟けば自分の前にメッセージウィンドウが表示されたとあった。
まあ、結論から言うと僕は現実を知っただけだった。
出来たら毎日投稿したいと思います。