アチラのお医者さんと妖刀つかい13
坂上さんは刀をぶらりと手に下げ、ほうけたようにつっ立っている。
その表情はさっき会った時とちがって、とろりとニタついている。
まるで、多くの獲物を見つけてうっとりとしている狩人のようだ。
「いけない!入ってくるな!」
怪心尼がさけぶ。
しかし、少女は制止のことばなど聞かなかった。
刀片手に境内に走り入ると、近づくムシ、そしてチバシリオオメダマを縦横に切り裂いていく。
まるで、夜叉か鬼女のようだ。
「いけない!あれでは猫たちも傷つけてしまう!」
先生のことばどおり、坂上さんは猫たちにも容赦なく切りかかる。
年からか足がもつれて逃げおくれた伯爵がやられようとしたとき
「――ニャゴアッ!」
雷閃とともにあらわれたまだらの猫が、坂上さんを威嚇し引きつけた。
猫の王・ハインリッヒだ。
「チイッ!オレにだまって、かってな動きをしやがって!」
ハインリッヒはぼやきながら、刀をふるう少女の相手をする。
しかし、さすがの三又猫もするどい刀に近よることもできず苦戦のようだ。
事態は膠着状態に入った。
怪心尼はメダマのコントロールに専念してるし、のんのん先生は傷ついた猫たちのケアに入る。
めずらしく興味を持ったのか、ジェームスは先生についていった。
「あっ、行っちゃうの?」
ぼくはこわくて近よることもできず庫裏のかげから一人、ことのなりゆきを見ているしかなかった。
すると、不意にうしろから
「――こんなところにサカイモノがいるだなんて、ラッキー」
うれしそうな声がしたと思うと、
口になにかかぶせられて――そのまま、ぼくの意識は遠のいた。




