表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あやしの診療所―のんのん先生とぼく―  作者: みどりりゅう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/428

アチラのお医者さんと妖刀つかい10

「……この呪宝寺というのは、もともとかむのにきょをなしていた、ある魔道の家が建立した氏寺うじでらです。その家自体はかむのをはなれましたが、この寺はかむのにのこり、縁者が住職を務めるしきたりなのです」

 先生のことばにつづけて


 怪心尼は

「あたくしがこの寺に入って、もう二〇年以上になります……あら、こんなことを言っては年がわかってしまいますわね」

 そう言うと上品に袂で口をかくしてくふふっと、うそ笑んだ。


「本日、わたしが急にうかがったのはこちらであずかっておられるおじょうさんのことです」


「洋子のことですわね、はい」


「坂上……という名字だそうですが、ではあの子はこちらの血縁ではないのですね?」。


「ええ。あの子は赤ん坊の時、わが家が引き取った子です」

 怪心尼のことばに、


 のんのん先生は顔をしかめて

「『引き取った』ですか……サカイモノの少女を、そう具合よく引きとることなどできないと思いますがね」

 すこし皮肉げに言うと


「あら。それについてはあなたが関知なさることではないでしょう、アチラの医師せんせい。これはあくまでもコチラの問題ですわ」

 きっぱりと言う尼に対して、


 先生は

「……そうです。だから、わたしはあなたがたには関わりたくないんです」

 ため息まじりに言った。


「ご存知のとおり、われわれ魔道をなす家にとって力を得るためアチラモノと交流することは重要な課題です。しかし魔道の血筋であっても、ほんもののサカイモノは少ない……というよりきわめてまれです」

 怪心尼は、ぼくの顔を見ると


「あなたはどうやらとてもすぐれたサカイモノのようね、おぼっちゃん。あたくしにははっきりとは見えませんけど、その肩にいるのはアチラモノでしょう?奥のほうに住んでいるモノのようね。

挿絵(By みてみん)

 あたくしたちが見ることができるのは、ごくコチラのきわに住むアチラモノだけです。この程度では、とても深いアチラの研究など出来はしない。

 ですから、われわれ魔道家がアチラへのインタフェースとして上質なサカイモノを確保しようとするのは、不可欠のことがらです。

 洋子は、わが家にとって貴重なサカイモノです」


 むずかしい言葉をつかう尼さまだな。

 でも、なんだかサカイモノ……坂上さんをただのモノみたいに言うのがいやな感じだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ