アチラのお医者さんとおかしな家8
「――ふう。それよりも……さて、ここはどこでしょうね?」
穴をふさぎおえると、先生は懐中電灯であたりを照らした。
どうやら、この部屋は台所らしい。穴をふさいだのも、ちょっとした食器棚だった。
冷蔵庫の扉が開けっ放しで、そこからちっちゃな缶コーラがたまに飛び出て前にうずだかく積もっているのはおかしかったが、それ以外、特にみょうなところはない。この部屋の家具や電化製品には、ぼくらをおそう気はないようだ。
そんな一安心した気持ちでいると、急に!
壁からすきとおったなにかが大量にとびでてきて、また向かいの壁に消えていった。
(――えっ!いったい、なにごと!?)
ぼくが思わず先生に抱きつくと
「ああ、あれは心配しなくともだいじょうぶですよ。ソラオヨギイカの群れです。彼らは壁でもなんでもかってにすりぬけて行動する、空飛ぶアチラモノです。われわれにはまったくもって無害なものたちですよ」
わらう先生は、しかしつづけて
「……うん?だけど、おくびょうなソラオヨギイカがわたしたちのことをまったく警戒せずに目の前をとおるだなんて、めずらしいですね。まるで、なにかに……」
のんのん先生は、ことばのとちゅうで顔色を変えると
ドンッ!
ぼくをつきたおすと自分もいっしょに床にたおれこんだ!
「なにするんですか!?」
と、さけびそうになった瞬間、
ガガガガガガッ!!!
壁を突きやぶって、なにかとてつもなく巨大な影があらわれたと思うと、イカたちを追うように、また向かいの壁を突きやぶって過ぎ去っていった。
体じゅうに壁の破片がふりかかってきたけど、そんなのどうでもいい。
先生がたおしてくれなかったら、今ごろぼくの体はぐしゃぐしゃになっていただろう。
「先生!なんですか、あれは!?」
「……あれはソラオヨギシャチです。空のギャングとよばれるおそろしいアチラモノです。あいつは『ダメ』です。まともに出会ったらやられます。コチラモノは気づいていませんが、たまにあるなぞの飛行機事故なんてのには、大抵あいつが関わってるんですよ。
ふだんは空高い成層圏あたりに生息していて、こんな地面そばの低いところにはあらわれないんですけどね。ソラオヨギイカの群れを追いかけてきたんですね。いやあ、あぶなかった。
しかし、あんなものまで入りこむとは、まずいなあ。『免疫』が落ちてる。はやく、この家の中心部に向かいましょう」
そう言うと先生は、こわれずにのこった台所の出口ドアを開けた。
そこにあったのは




