アチラのお医者さんとおかしな家7
「――先生、あれってなんでしょう?」
「はい?」
「ほら、奥から『なにか』やってきます!……あれって、まさか」
懐中電灯で照らすなか、駆けるようにやってくるのは
「……犬?」
「いや、ちがう!あれは家具ですよ!」
「へっ?」
なにふざけたこと言ってるんだと思われるだろうけど、廊下をこちらに駆けてくるのは、たしかにのんのん先生の言うとおり、ソファやイスなどの「家具」だった。
ただ、ぼくは生まれてこのかた、シ-トのすきまからよだれをたらし、木製の四本脚をけもののように動かして駆けてくるソファやイスなんて見たことない!
「ふむ!さては壁をこわしたから、わたしたちを敵と判断したんですね。空間制御はともかく、防衛機能はまだはたらいているらしい」
そんなわからない解説、いまはどうでもいいよ!どうにかして!
「――さあ、早くこちらに入って!」
先生は、大急ぎでジェームスとぼく、そしてわが身を壁の穴にくぐらせた。
しかし
「先生!『つかい』さんが!」
廊下に最後までのこった「つかい」にソファとイスがかみつく。
「死んじゃうよ!」
けれど先生は冷静で
「いいんです。それより、いまのうちになにかで壁を……ちょうどいい、これだ!」
そう言って、そばにあった棚らしきものを引きずって穴をおおった。
「……あの『つかい』は式神……いわば、ちょっとしたロボットのようなものです。『こわれた』からといって、気に病まなくともけっこうです。むしろ、おとりとして私たちの身を守ってくれたのだから十分以上の役割をはたしてくれたと言えるでしょう」
穴のすきまから、イスやソファにかみちぎられたおじさんが、紙のようにポロポロとくずれていくのが見えた。
ありがとう!あなたの犠牲はむだにしないよ!




