アチラのお医者さんとブリキのお城3
火薬くさいにおいと煙がぷしゅぷしゅしている。
ジェームスはふゆかいそうにその穴のまわりをくるくる飛んでいた。
ぼくはこわくてかたまったけど、
先生ったらのんきな口ぶりで
「あちゃ——っ。これはヨシノさんが帰ってきたらおこられるかな?さっきまでは小さな銃撃だけだったんだけど、今度は砲撃で反撃か。何度もためしたから怒らせちゃったのかな?」
と、あごをかいている。
「——まあ、とにかくごらんのとおり、この城は外からこわそうとしてもなんともなりません。むしろ、こうやって強烈な反撃を食らうだけです。まったくやっかいなしろものですよ」
「これって、もしかしてアチラの品ですか?」
「ええ」
そりゃそうだよね、なにせのんのん先生はアチラモノのお医者さんなんだから。
「でも、先生が生きもの以外の、こんなおもちゃのお城を開けることまでうけおうとは知りませんでした。鍵屋さんみたい」
「べつに好きでやってるわけじゃないよ。おど……たのまれたからしぶしぶさ」
先生はちょっとブスッとすると、城を手に取った。
「だいじょうぶですか、さわったりして」
「ヘンにこわそうとしたりしないかぎり、なにもしてこないよ。これは、もともとはただのコチラ製のからくりおもちゃです。そこに特殊な術をかけて強化してるんです。持ち主……城の主にしか、なかのものを取り出せないようにね」
先生がふると、たしかになかでなにかカサカサ音がしている。
「……主、ですか?」
「ええ、依頼者によると鍵はもともとないそうです。もとがからくりおもちゃですから、どこかの部品をひねるとかずらすとか、なにか秘密の操作をすることによって開くんじゃないかと言うんですけど、それがなかなか見つからないんですよねぇ」
そう言いつつ手に持った城をこねくりまわす先生に、
ぼくは
「——それって、おかしくないですか?」
おもわずつぶやいた。
「えっ?」
「だって城の主が、そんな面倒くさい操作をイチイチしなきゃいけないのかな、と思って。門をじっさいに開け閉めするなんて、そんなの家来のやることでしょ?」
先生はぼくの意見に目を細くして
「ほほう、一理ありますね。じゃあ、あなたがこの城の主だとして、このお城の門を開けるのは、どうやります?」
机の上に城を、ぼくに向けて置くとたずねた。
「そりゃ、門の前に立って言うんじゃないですか?
『ご主人様のお帰りだ、門を開けろ!』って」
そう言ったとたん、城の中で歯車の音がカタカタしはじたと思うと、つりさげ橋ふうの門がガクンとおろされた。
門が開いたのだ。




