アチラのお医者さんとブリキのお城2
「どうしたんですか。それ」
「いえ、ちょっとね。おど……たのまれたものなんですが、うまく城門が開かなくてこまっています」
「開かない?こわれたんですか?」
「まあ、そんなものですかね」
「……よくできたお城ですね。ものすごくこまかい」
「ええ、ブリキ造りの古いものです」
ブリキのおもちゃって、よくテレビとかで高い値段がついてるけど、ホンモノを見るのははじめてだ。
西洋風のキャッスルで、ところどころ金細工っぽい装飾になっている。塔には赤、青、黄色のひらひらとした旗までついて、まんまえの城門のところには小さな衛兵の人形が立っていた。
「開けるって、これ、いれものですか?なにか入ってるんですか?貯金箱?」
「さて。わかりません。なにせ、まだ開きませんから」
と、先生は返事をしながらも心はここにあらずで壁にかかっている時計を見て「もう時間だなぁ。まずいなあ」と、ぼやいた。
机の上には大きな金づちや先のとがった釘ぬきが置いてある。
「もしかして、こわして開けるつもりなんですか?もったいない」
「そんな心配はいりません。なにせ、この城の防禦は固いから」
なにをおもちゃの城相手に言っているんだろう、おおげさな。そんな僕の表情を読んだのか、
先生はご不満そうに
「——信用できないなら、きみも一度体験してみるかい?まあ、ちょっとあぶないからこれで自分の身を守ってね」
そう言って先生はぼくに金属でできた大きな盾みたいなのをわたした。
自分も同じものをかまえると
「いいかい、いくよ」と、金づちを城の上から思いっきりふりおろして……
カ——ンッ!
すごい音がしたと思うと——あれっ!?金づちのほうがはじきとばされた!城はなんともなく机の上にのっかっている。
「すごい!先生!」
「あぶないのは今からだよ、盾をかまえて!」
言うやいなや
プップクプ——
ラッパの音がしたかと思うと、城の小さな窓が開いて
パンッ!パンッパン!
銃声とともに盾に衝撃がきた。
えっ?シャレになってない威力でおそわれてるんだけど。
びっくりしてると、今度はちょっと大きめの窓が開いて……
「いけない!こんどは大砲だ。盾でもきびしい!ホウイチくん、あぶないからよけて!」
えっ?急にそんなこと言われても……あわてて頭を下げると
ドゴーン!!!
という爆音がして、壁には穴が開いていた。




