ゴブリンのなぞとき脱出ゲーム8
続く問題は
今度は野郎どもの視線を一、二、三の順に読め……って、
どういうこと?
「これもまだ絵の中にヒントがあるんでしょう」
またもや名探偵ヨウコの推理が始まった。まかせよう。
「野郎というのはさっきの乙女と対比してのことでしょう。つまり見るべきは男……オスの小鬼たちでしょう。それを一、二、三の順にって……」
ふむ、
「……わかった!この数字は鬼のツノの数よ。そして、その鬼の視線の先にある文字を順につなぐと」
おおっ!
「『ヒ』『ケ』『Ⅱ』」
「ヒケⅡ(ツー)って、なに?回答欄は三文字だよ」
ヨウコちゃんは考えると
「……もしかして『Ⅱ』って『ケ』のななめうえにつけるんじゃない?つまり『ヒゲ』よ」
「おおっ!すごいね、ヨウコちゃん」
『Ⅱ』を濁点と理解するなんて、めざましい進歩だよ。
もうぼくの出番はなさそうだ。
続く問題。シロヌキ数字をつなげ
……って、『蟻』に『かたつむり』に『とかげ』(ジェームスではなさそうだ)に『くるま』に『じょうご』かな。
もしかして、単純にあたまの文字をつないで「あかとくじ」かな?「あかとくじ」って「赤と9時」とかかな?『くじ』って『あみだくじ』?
首をかしげるぼくに、またしても名探偵ヨウコが
「もしかしてこれ『じょうご』じゃなくて『ろうと』なんじゃない?」
そうか。たしかに『あかとくろ(赤と黒)』のほうがしっくりくるね。
3問目は、計算をしろって……『2+5=7』『3+8=11』はそりゃわかるけど『4+9=1』って。
「なに、これ?意味わかんない」
理不尽な数式に、少女はご立腹だ。
でも、今回はぼくがすぐにわかっちゃったな。絵の左上に地味に書かれてある時計がヒントだよ。これは時計上の時間の計算だよ。
「どういうこと?」
2時+5時=7時、3時+8時=11時だけど、4時+9時=13時=1時になるんだ。だから答えは8時+8時=16時=4時だから『4』になる。
この計算法は、前にのんのん先生が教えてくれた。診察室で予約してた患者さんがなかなか来ずにヒマしてたとき、時計をながめながら(ぼくがたずねてもないのに)説明してくれたんだ。たしか「12を法とした計算」とか言ってた。
「法の演算は整数論……たとえばガロア理論を理解するときに絶対必要な概念なんですけど……高校でもあまりやらないみたいですね」
などと、小学生に言ってもしかたないことを言ってた。
ぼくは九九がなんとかできる程度で、正直、割り算もろくにできないんだから。一生関係ない話してるなぁと思っていた。
でも謎解きで役立つとは。先生、グッジョブだよ。おかげで次に進める。
次の問題は、この3問の答えを埋めた
「『4』人いる。『赤と黒』がある。そのうちひとりだけ『ひげ』がない。これはなんだ?」となる。ヒントは、むかしながらの遊びねえ。
「正解はわかった?」
ヨウコちゃん、その言い方は良くないよ。考える気無いでしょ。
「言ったでしょ、あたしはこういう問題は苦手」
言われてもなぁ……ぼくもわかんないよ。むかしながらの遊びって、ベーゴマとかメンコとかそういうの?うわさには聞いたことあるけど、したことないしな……。ちゃんとぼくらが今でもしてる遊びかな?
もうちょっと、なんかヒントない?
絵を見つめていると、右下のすみにあるのは、なにこの葉っぱ?地味な感じの三つ葉……
……そうか!これって、もしかしてトランプじゃない?
「……どういうこと?」
トランプの絵札には、数字ごとにスペード・ダイヤ・ハート・クラブが4人ずついるよね。ダイヤとハートは赤で、スペードとクラブは黒だ。
そのなかで『12』……クイーンは、女のひとだからひとりもひげをはやしてないし『13』……キングは、逆に全員がひげをはやしてる。ただ『11』のジャックは、スペード・ダイヤ・ハートはひげをはやしているけど、ひとりクラブ……「みつば」だけ、ひげがない。
「……ふうん」
ヨウコちゃんがもっともらしくうなずく。
だから正解は『JACK (ジャック)』だ。
うちこむと、扉があいた。




