ゴブリンのなぞとき脱出ゲーム2
んで、目が覚めた。
「ぼくを起こしてくれたんだね。ありがとう、ジェームス」
ぼくは親友に礼を言うと、となりに横たわる少女をゆさぶった。
武の道に長けた少女は
「……ホウイチ?」
薄目を開けると、ハッとして起き上がり、すばやくあたりを見渡す。
「ここは?」
きびしい質しに
「わかんない。どうもぼくたち眠っちゃったみたいだね」
ハハハとわらおうとするが
「ねむり薬をかがされた。不覚!」
自分に厳しいサムライ・ガールは、くやしげに唇をかむと
「どこも身体におかしいところはない?」
聞いてくれる。
うん。ぼくもジェームスもアオタヌキも、なんともなく大丈夫そうだよ。
「コチラの薬じゃなさそうだね」
前にのんのん先生に聞いたことがあるんだけど、ドラマや映画によく出てくる意識を失うシーン。麻酔薬をしみこませたハンカチを口に当てられたり、スプレーで吹きかけられたりしてすぐグッタリするけど、実際にはあんなこと起きないらしい。そんな雑な薬剤吸引では、気分が悪くなるだけだそうだ。点滴で麻酔をかけるならともかく、口から吸ってすぐに意識を失わさせるなんて、それこそ死に至る毒ガスでも使わないとむずかしい。
「コチラの技術では、安全なかたちで瞬時に意識を失わさせる経口経鼻薬なんて、まだ無いんじゃないですかね?」
だそうだ。
そのとき、ついでに「じゃあアチラならあるの?」ってたずねたら
「そりゃありますよ、いろいろと。ほら、白雪姫だって、魔女の毒リンゴをひとかじりしたらスッテンコロリ……だったでしょ。王子様が起こすまで目を覚ましませんでしたけど、身体に害はありませんでした」
スッテンコロリ……ね。まあ、たしかに白雪姫に後遺症が残ったという話は聞かない。王子といつまでもしあわせに暮らしました、めでたしめでたし……だもんな。
アチラなら、そんな便利な薬剤があるのかもしれないと、ヨウコちゃんに話していると
「ケケケケケ。そのとおり。そのガスはからだにわるくなどないぞ」
にわかに部屋に声が響きわたり、壁の一面に映像が映し出された。(プロジェクターらしい。うすぐらいから、そんなものがあるなんて気づかなかった)
映像の中にいるのは怪しいサングラスに豊かなひげをたくわえた……どう見てもジェーン姫だった。




