アチラのお医者さんとRPG13
かみねぇ……まあ、おどろかないな。
ぼくも、もう幾柱もの神さまに会ってきたからね。ただ、異世界の神さまに会うのは初めてだな。
先生によると世界は、その世界(宇宙)ごとに担当している神さまがいる。つまり管理神だ。
たとえば、いま診察室の窓際に置かれている岩猿ガンジロウが抱えている極小の宇宙にだって(ぼくは会ったことないけど)管理神はいるらしい。そして、その神の個性によってそれぞれの世界の発展のしかたも変わってくるのだ。
いま先生の治療を受けた神の管理する世界……ズントゥには、ぼくらが住むこの世界とは異なって『勇者と魔王』というシステムがある。
「神さまが魔王もしてるんですか?なんで?」
ぼくの問いに
「まあ、彼の論理で言えば、ズントゥ人類の霊的発展のためですね」
レイテキハッテン?なにそれ?
「あの神は自分が担当する人類にあまくてね。世界の気候や環境などの初期設定を、ズントゥ人にとって過ごしやすいとても穏やかなものに設定したんです。こっちの世界でふつうにある地震や台風、噴火、津波、日照り、冷害などの自然災害を一切なくしたのです」
へえ。いいじゃない?それ。ラクそうで。
「そうです。楽です。おかげでズントゥ人は毎日あくせく働かずとも、なにも考えずともよい、のほほんとした生活を送ることになりました」
ほう。
「ただその怠惰な日々の結果として、ズントゥ人には種としての発展が一切見られないばかりか堕落が生じるようになりました。刺激を求めて酒や麻薬に溺れたりは当然なこと、果ては快楽的な暴力や殺人に走るものが多数発生しました。霊的にも知的にも物質的にも、彼らはちっとも進化しなかったのです。あの神は、未熟なズントゥ人には過ぎた余裕を与えたのですね」
それはおそろしい。
ズントゥの管理神は、先生に対して
「そのあたり、この世界の神はうまいな。ちゃんと、人類にそこそこの不自由を与えている。そして、その不自由をどう乗り越えるか、かなり彼らの自由意志にまかせた。おれも最初からそうしていればなぁ……」
しみじみと語ったそうだ。
「このままでは、自分の世界は滅んでしまう。そう判断した彼は、泣く泣くこどもたち……ズントゥ人類に、試練を与えることにしました。
自然災害のかわりに人類をおびやかす存在……『魔族』を生み出し、人類への襲撃を始めたのです」




