アチラのお医者さんとRPG11
あっ、きのう商店街そばで見たマンション!
そうだ、映画の話にかまけて、先生にたずねるのを忘れてたよ。
「ああ、あなた見ましたか?……そうですか。犠牲はあっても、彼らも役目を果たして故郷に帰ることができたのですね。それはよかった」
ぼくの見た光景を聞いた先生は、神妙にうなずいたが、
魔王?は
「よかったもなにもあるか。おかげでわしの体は痛い」
うめいている。
なんかヘンだな。
「なんで魔王……さんが生きてるんですか?勇者に倒されたんじゃないの?」
本人を目の前にして言うことじゃないけど「魔王が倒される」って、体が痛くなる程度のことなの?「滅ぼされる」ってことじゃないの?
ぼくの当然の問いに、魔王はその垂れ下がった白眉を少しく上げると
「ああ……そりゃまあな。まちがいなく『今回の』魔王は、みごとに勇者一行に滅ぼされたさ。……ただ、魔王は滅ぼしても数千年おきに復活せにゃならんからな。次の出番のために、できるかぎり早く体のメンテナンスをしておきたい」
そんな、次の舞台にそなえる役者みたいなこと言って……
ぼくがとまどうなか、先生は魔王に触診すると
「あなたのこの体も、ぼろぼろですね。もう何回勇者に倒されました?」
「こっちに来てからは、3回だな」
返事に
「核のほうまで傷んでます。前回にわたし言いましたよね?もう次回やられたら、魔王は引退すべきだと。決心はつきましたか?」
老魔は、目をキョロつかせて
「うん?ああ……うん、そうだな……いや、しかし、まだズントゥの人類には魔王討伐が必要だぞ」
ぼくにはわからない言い訳をする。
それに対して、先生が
「いいかげん、もう『勇者と魔王の対決』による発展システムをやめたらどうです?素直に人類だけにあずけては?」
言うと
「ばかいえ!まだまだあんな未熟なものたちに、世界を任せるなんてことができるか!あいつらだけにまかせておっては、世界はすぐ滅ぶ。魔王という脅威があるからこそ、やつらも緊張感を持って弛まず発展していられるんだ!こっちの世界の神のように、人類自身に将来の成り行きを預けるなどというあぶないまねができるか!」
強く反論する。
「だから、もうじゅうぶん発展したでしょう?今回だって、ほんとうはもうよみがえりのポーションなど用意せずと、彼らの自前の武器だけであなたを倒すことはできたはずです。そこに余計な手助けをして……」
先生の冷ややかな指摘には、白眉をよせて
「むむぅ……とはいえ、まだわしとて負けてはおらんぞ。ちゃんと一回ずつやつらを倒した。ポーションなしでは、やつらはまだわしを攻略できん」
抵抗する。




