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あやしの診療所―のんのん先生とぼく―  作者: みどりりゅう


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アチラのお医者さんとRPG2


「もしかして魔楽館まらくかんのこと?」

「ええ。あそこなら自由にどうぞ」


 商店街のなかで先生が所有している廃映画館。

 そこにかってに出入りして、好きな映画を映して観てよいって、言ってくれたんだ。


 映画館をひとりじめ(ほんとうはジェームスがいるからふたりじめ)できるなんて、かなりすごいと思う。

 といっても映画館だから、このまえ伽羅に引きこまれたときみたいに、いちいちフィルムを回さないといけないのかと思ったら、そんなこと無くてDVDなんかもちゃんと映るようにしてあるそうだ。

 先生が映画館を引き継いだときに、自分の観賞用に改造したそうだけど、実際にはあまり観るヒマがないんだって。


「だからまあ、ご自由にどうぞ。ネットにもつないでますから、ゲームもできますよ」

 大画面でプレイできるなんて、好きなひとには最高だろうけど、ぼくはコントローラの操作とかニガテなんだよな。ただなにもせず動画を見てるほうがいい。


「じゃあサブスクにしますか?ひとつやふたつ加入してもらってもかまいませんから」

 とも言ってもらったけど、さすがにそれはあつかましいと思って遠慮した。


 そんなことしなくとも、先生はいっぱい(古い)映画のソフトを持っていた。DVDやBD……ブルーレイだけでなく、VHS……ビデオ・テープや、LD……レーザー・ディスクっていうDVDの親玉みたいに大きい円盤まである。図書館で借りることもできるし、観るものにはこまらなかった。


 ほんとは友達も誘いたいけれど、この映画館はちょっと特殊だからふつうの子だとつれてきてもすぐわすれちゃうだろうな。


 ぼくとおなじサカイモノであるヨウコちゃんならだいじょうぶだろうけど、彼女はあまり映画に興味がなさそうだ。

 それに、なにより彼女はいま大事な用事をしているから、安易に声をかけられないんだよね……。

 その用事とは、のんのん先生からのたのまれごと……弱ったアオタヌキの世話だ。


挿絵(By みてみん)



 アオタヌキは、もともとある陰陽師というか博徒ばくちうちによってシロタヌキやクロタヌキとともに生み出されたクダギツネ……念体のひとつだ。


 術師の死後、クロタヌキとともにわるい術者に使役されたあげく、のんのん先生の兄弟子・伽羅きゃらによって他のアチラモノとごちゃまぜキメイラにさせられて正気を失った。それを行者が調伏したあとのんのん先生が保護したんだけど、すっかり弱体化してしまった。

 先生の治療やシロタヌキの介助もあって少しはましになったけど、まだまだ脆弱な状態だ。


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