表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あやしの診療所―のんのん先生とぼく―  作者: みどりりゅう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

377/428

アチラのお医者さんとその師匠3の25

 つづけて

「だから彼……伽羅が、自分こそ正当な師の後継だと思うのは無理からぬことです。なにせ、そのような設定で作られたのですから」


「じゃあ、なんで先生が医者になったの?」

 ぼくがたずねると、


 先生はしばらくポップ・コーンを噛みながら宙を見ていたが

「うーん……兄弟子が口走ったように、師匠が嫉妬したとかそういうことではありませんね……」


 それを聞いた瞬間、うしろにいたヨシノさんの表情が動いた気がした。

 まるで「なんて気が利かないの、この男」と言ってるみたいで、ゾクッとした。


 そんな冷たい視線にも気づかない脳天気な先生が、話を進める。

「ただ単に、伽羅では『この街』に医者として認められなかっただけです。アチラの医者は、人間でないといけなかったんですよ。だから、わたしみたいな未熟者がなりました」

 コーラを飲むと

「伽羅がそのことでわたしをうらんでいるのは知っていましたが、師匠の残した知識を手に入れるため、この街の防衛……免疫を壊そうとするなんて思いつきもしませんでした。なにせ、まったく的はずれなことですから」


 そうだな。ヨシノさんの中にお師匠さんのデータ(?)があるのに、街のシステムを壊してもしょうがない。


「免疫をおかしくしたことで、この街には様々な異常が発生し混乱しましたが、まさかそこで出てきたウイルスに伽羅自身が罹患するとは……因果ですね。自分のことを人間だと思いこまされた式神が、人間の子どもを式神として使った挙げ句、自分がアチラモノの病気にかかるとは……」

 重い感じで

「師匠も、たしかに罪作りな気がします。あの方は、伽羅に自分を人間だと錯覚させたまま破門・追放しました。そりゃ、そんな不自然なことをしてはひずみが出ます。少なくとも、そこは放置してはいけなかった。師匠がわかっていてやったとは思いませんが、結果としては残酷な仕打ちになりました」


 その言葉を聞くヨシノさんの視線が、どうもそらぞらしい。


(――もしかして、ヨシノさん(っていうか、そのもとの比丘尼)って、こうなることを全部わかってやったんじゃないの?伽羅が言ってたように、単にのんのん先生から親しい兄弟子を遠ざけるために……って、でもまさかそんなおそろしいこと、女の人が企てるかなぁ?)


 不審に思ったぼくと目が合ったヨシノさんの顔が、どうにも怖い。

 無表情だけど「余計なこと言っちゃだめよ」と言っているみたいで。

挿絵(By みてみん)

もちろん、ぼくは話を変えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ