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あやしの診療所―のんのん先生とぼく―  作者: みどりりゅう


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369/428

アチラのお医者さんとその師匠3の17

 言われた兄弟子は

「そうさな。おまえはたしかに俺との契約を果たしてくれたよ、行者。しかし、やはりその式神たち……ルンルンとレンレンを人の世界に戻すのはむずかしいな」


 そう言ったとたん、後ろの壁から縄が飛び出して


「「わっ!?」」

 ふたごを縛りあげる。


「な、なにをする!?」

 行者の叫びに


「そのふたごは、人間の幼子おさなごを直接式神とする興味ぶかい検体だったが、さすがに成長とともに自我が発達していく。自分たちのやることに疑問を持ち出していた。それは、使い魔として勝手が悪い……ただの道具に、理性的な自我など不要だ」


「そうだ!だからもう手放しても良いと、協力と引換におまえはわしにこの子らを譲った」


「そうだな。きみが、師匠が施した呪を解除してくれたのは大きかった……それがなければ、俺はこの街に入ることすら出来なかった。だがねぇ……」

 兄弟子は口を笑み曲げると

「やはり、そのふたごを譲るのは問題があるな。なにせ、その子らは俺の内情に通じすぎている。情報漏洩を防ぐ観点からも、使用済みの機器はリサイクルに回さず自宅廃棄……滅却しておかねばなるまい」

 まるで、ふたごを使い古したハード・ディスクみたいに言う。


「な、なにを言う!人の子をかんたんに滅却など、許されぬ!」

 行者の(そこは)まともな意見に、


 金髪の麗人は

「……俺は、人間にしてはどうもそのあたりの感覚がわからないんだよねぇ……サイコ・パスってやつかしらん?」

 小首をかしげてわらう。 


「貴様!さては、初めからわしもたばかる気だったな!?」

 激高にも


「ふむ。まあ映画の中でいっしょに始末する気ではあったよ。最近は、観客にバッド・エンドも受け入れられてるからな」


「なにを!」

 行者が杖をふるって、ふたごたちを救わんとするが……


「無駄だ」

 兄弟子が手をふると城の護衛たる白紙衆……いや、かむのの街を守るはずの式神……シロゴヘイたちが不気味に染まったすがたで、わらわらとあふれ出す。


「むぅっ!?これは!?」


 兄弟子はカラカラと笑って

「言っただろう。もはやこのシステム……映画は俺の支配下だと。シロゴヘイは染め変えたし、城内の設定も思うがままだ」

 指を弾くと、縛られたルンルンレンレンの足元の床に穴が開く。

 そこには紅蓮の炎が……。


「「きゃっ!こわい!やめて、あるじ!……たすけて!行者!」」

挿絵(By みてみん)


「ガキども!!」

 行者は叫ぶが、イロゴヘイの妨害によって近づくことが出来ない。


「――どうしよう!どうしたら!」

 ぼくも、口では言うけど体が動かない。

 なぜなら、今のぼくはもはや機敏な少年忍者・トカゲ丸ではなく、ただのどんくさい小学生男子のホウイチだからだ。


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