アチラのお医者さんとその師匠3の12
scene? フェイド・イン
画面が暗い。どうやら、茂みの中になにものかがかくれているらしい。
そのかくれひそむものの心の声をナレーションで。
(――しくったわ。うるさい爺の目をごまかして、コチラでひとり遊んでおったら、よからぬものたちにつかまってしもうた。そのうえ、あのような盗みの片棒を担がされるとは、なんたる恥辱か。もはや赤子……臣民に合わす顔がないわ。
――ウウッ。なんとか逃げ出したが、傷を負ってしもうた。
爺が申しておった医者のところにたどりつけたら良かったが、その体力もない。このまま力尽きて命も失せるか。
万乗の君たるものとしてなんとも情けない末路じゃが、ことここに至っては是非も無し……)
ガサゴソ茂みの音。
(……うん?いかん、追手か?……と、なんじゃ?コチラモノか。おお、しかも余が見えるか?それは奇特なこと……しかし、なんと「うつけた」顔をしたこどもよのう……)
少年の顔面のクローズ・アップ。
「――きみ、ケガしてるの?」 フェイド・アウト
scene78…… フェイド・イン
平羅平羅城の天守閣扉前。
「――見たか!これこそ蜥蜴流忍術奥義・トカゲの尻尾切り!おぬしが切ったは、拙者の本体ではない!異髏紙流忍術破れたり!!」
トカゲ丸、満身創痍になりながらも黒巻紙を切り捨て、戦いに勝利する。
「――岩鉄坊に熊猫坊!異髏紙団はたおしたぞ!これもうぬらのおかげだ」
もはや、残るは天守閣内部に入るのみ。しかし、扉をどう開けたら良いのかわからない。途方に暮れる。
「思えば、拙者より早くたどり着いていた黒巻紙も、扉を開けることが出来なかったのだ。いったいどうすれば……」
そのとき、トカゲ丸は自らの胸あたりに光を放つものに気づく。取り出したそれは、水晶の首飾り。
「むむっ!これは幼少のみぎり、老師から肌身はなさず持っておれといただいた首飾り……もしや!?」
水晶を近づけると、あれほど固かった扉がひとりでに動いて、観音開きする。
トカゲ丸、袖で涙を拭いながら
「ああ。さてはこのことを老師はご存知であったのだろう……かたじけなきは師の恩なり」
ついに平羅平羅城の天守閣に入る。フェイド・アウト
scene? フェイド・イン
廃ビルの一室。
黒短髪(の女性?)が白衣をまとっている。
なにやらおぞましい生体実験。小動物をメスで切り開く。
そこに、にわかに立ち入った長金髪の、同じく白衣女性。
「あっ!し、師匠……」
金髪女性、おぞましい実験の様子を睨めまわすと
「きさま……アチラモノのみならずコチラのものの命まで」
「お師匠さま……これは、あなたにまだ長くこの世にいていただくための実験です……」
「そんな気づかいはいらぬと言うたであろう!……もおよい!きさまなど、破門だ!!」
「破門!?そんな!それでは、いったいだれがあなたの後の医者を?」
「野々村がおるではないか。あやつに継がせる」
「のんのんに!?そんなバカな。あんな愚鈍者に、あなたの尊い知識が扱えるはずがありませぬ!」
「そんなことはない。……あれとて一人前の男だ。やればできよう」
黒髪短髪、不審げに
「前から思っておりましたが、師匠はあの男に甘すぎます。まるで恋……」
金髪女性、みなまで言わさず
「去ね!!わしの眼の前に二度と立つな!!」
フェイド・アウト




