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あやしの診療所―のんのん先生とぼく―  作者: みどりりゅう


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341/428

アチラのお医者さんとその師匠1の8

「――兄弟子は、わたしがなんとかします」

 先生の声音には、強気と弱気が入り混じっていた。


「……って、具体的にはどうするの?」

「わかりません」


 じゃあ、だめじゃない。ぼくのジト目に、先生はあごをかきながら

「ゴブリンたちなら、少し情報を持ってるんでしょうが……」


 どういうこと?


「彼らが、兄弟子にあの廃工場を仲介・斡旋あっせんしました。目ざとい彼らですから、その際に情報をつかんでいるはずなんです」


「じゃあ聞いてみたら?」


 ぼくのことばに、のんのん先生は首をふって

「ゴブリンはビジネス情報をもらしません。彼らは商売上の信義をとても重んじます」


 そういえば、こないだ亡くなったゴブリンの王子・ジャックも商売上の不義理をしたとかで集落から追い出されたんだった……

 ――ああ、ジャック!いろいろあったけど、最後は立派な勇者だったなぁ。


 ぼくの表情を察した先生は

「――彼のことは残念でしたが、最期に同胞のもとに帰ることができたのは良かったのではないですかね?感謝してたでしょう」


 たしかに今際いまわに礼を言われたけど、ぼくはなにもしてないよ。

 となりで寝ていたジャックの妹・キャサリン姫に合わす顔がなかった。


「そんなことはありません。あなたがジャックと知り合って、いくつかの場面に立ち会った。それだけで、あなたは彼にとってとても価値あることをしたと言えます。そのことは自分で誇りに思いなさい。さもないと、あの小鬼に怒られますよ」


 ふうん。よくわかんないけど、たしかに彼の思い出はあるな。

 いつかキャサリンに会うことがあったら、話をしてあげよう。


 先生は

「今ゴブリンたちは、ジャックへの喪に服しています。そっとしておくべきでしょう」

挿絵(By みてみん)


 言うと、つづけて

「……それと、あなたのことも考えないとね」


 ぼく?なんで?


「忘れましたか?あなたも兄弟子にねらわれたでしょう?サカイモノということで」


 そういや、そうだったな。ルンルン・レンレンに(手足をちょん切られ)連れて行かれるところだった。


鵺郎ぬえろう博士のようにサカイモノをつかった研究を考えているのでしょうが、どうせろくでもないことです」


 そりゃそうだ……って、それより

「ぼくもだけど!先生、それならヨウコちゃん……坂上さんも守ってあげてよ!あの子は、一度さらわれたんだから!」 


 ぼくと同じくサカイモノの坂上洋子ちゃんは、前に刀研ぎネズミのチュウゴロウたちをかばって捕まった。

 あの子は剣の腕は一流だけど、根がマジメすぎるサムライ・ガールだから、そこを狙われないかと心配だ。


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