アチラのお医者さんとその師匠1の7
「兄弟子のことばだと、マナを奪われ理性が働かなくなった人間の無意識を乗っ取り式神化する技術も完成させているようでしたが、そこは機械化されてないようです」
人間の式神化というと、ヨウコちゃんをあやつり人形みたいにしたひどいワザだな……それにルンルンとレンレン!あの気の毒なこどもたち!
あの子たちには、ぼくも鎌で手足をちょん切られそうになったりと怖い目にあったけど、ほんとうはぼくより幼い人間のふたごなんだ!それをまるでモノみたいに式神にするなんて、ひどい話だよ!
「ええ、ひどい話です……ただ前回の件で、デンキチュウを使ってこの街に悪さをするのは難しいと、彼は判断したはずです。なにせ、あなたに簡単に打ち消されましたから」
そういや、柏手を打ったら吹き飛んだな、あのムシ。
ぼくなんかにやられるなんて、軟弱なムシだ。
ぼくのことばに、先生は
「……けっしてデンキチュウが弱いわけじゃなくて、あなたが特別なだけなんですけどね」
冗談を言うと
「とにかく、兄弟子は前回とはちがう悪さをしかけてます。ただ、それが何なのかがわたしにはまだわかっていません……こまったものです」
本当にこまってるんだろう。疲れた顔をしていた。
「――そんな悪さをしかけて、先生の兄弟子って、いったいなにがしたいんですか?」
たずねると、先生はしばらく間を開けたあと
「さてね……なにせ、あの方とも長いこと会ってませんから」
窓から外を見ながら言ったが、それは先生がすっとぼけるときの仕草だ。
ほんとうは、なにか思い当たることがあるんだろう。でも、それを口にしたくないらしいというのはわかったから、聞かなかった。
代わりに
「……おんなじお弟子なら、あのお師匠さんに叱ってもらったらいいんじゃないですか?」
話の最初っから、気になってたことを聞いた。
だって、そうでしょう?弟子が悪いことしてるなら、それを止めるのは師匠の仕事じゃない?
ぼくの問いに、しかし先生はきっぱりと
「それはだめです。兄弟子はすでに破門の身です。ふたりを会わすことはできない」
意外なぐらい強い口調で言うものだから、それ以上なにも言えなかった。
こじれた師弟関係って、むずかしいのかな?こないだ(やっと)ちょっとだけ見た「スター・ウォーズ」のオビ・ワンとダース・ベーダーみたいに。ダース・ベーダーがオビ・ワンをやっつけてた。
ふたりを会わせて、そんなことになったら大変だもんね。
(そういや、ベーダーって主人公のルークのお父さんも殺したんだよね。つくづく悪いやつだ)




