アチラのお医者さんとアカカガチ5
「――いやぁ、どうもありがとうございました。あなたのおかげでホウイチくんになにもなくすみました」
「あれ、いやですよう。先生。そんな他人行儀なことおっしゃって。先生とあたしのなかじゃないですか。こんなこと、あたりまえですよう」
ぼくを診療所に空輸してくれたクロハさんは、のんのん先生から何度もお礼を言われて、うれしそうに体をくねくねさせていた。
そんなふたりのようすに、ぼくの気持ちが落ちつくようにとココアを出してくれているヨシノさんの手はぷるぷるとふるえている。
「ちょっと、あたしにもお茶の一杯ぐらい出しなさいよ」
というクロハさんのことばに対しても
「あら、ごめんなさい。カラスさんにはどんなお飲み物を出したらよいかわからなくて。ドブにたまった水などがやっぱりいいのかしら」
と、つっけんどんだ。
「――あんた、よくもそんな口をたたけるね。あたしがいなきゃこのボウヤがどうなってたとお思い?」
険悪なふたりのようすに
「そっ、そうです。クロハさんのおかげでホウイチくんはなにごともなくすみました。その点は『診療所として』ふかく感謝しなければなりません」
のんのん先生はヨシノさんのほうをわざと見ないようにして、なるべく事務的な言い回しと表情で、クロハさんをたたえた。
「ホッホ。先生の助手ということは、いわばあたしにとっても身内も同然。外で大声を上げて、その情報をわるものに利用されるようなおバカさんとはちがいますわ」
あのコウモリが、ぼくが診療所を出たときにヨシノさんがかけたことばを聞いて近よってきたのはまちがいない。そのことに対するあからさまなあてつけに、ヨシノさんは頭に血がのぼって、今にも飛び出しそうに首をぱかぱかさせている。
ぼくはもうしわけなく思って
「すいません。見ず知らずのアチラモノについていったりしたぼくがわるかったんです。学校でも知らない人にはついていかないように言われているのに……」
と、あやまった。
しかし、ほこり高い首ぬけ女は
「いえ、たしかにあたしが外でよけいなことを言ったのがまずかったですわ。あなたが、そのコウモリをのんのん先生の使いだと思ったのは無理からぬことです。あたしこそもうしわけないことをしました」
と、顔をひくつかせながら、頭を下げた。
クロハさんは口をおさえて、ほくそ笑んだ。
のんのん先生は、そんな女性二人を見て見ないふりで、ぼくに
「わたしこそ、安全をはかるつもりであなたはわたしの助手だとアチラモノたちに広めておいたのですが、まさかそのことが裏目に出るとは思ってもいませんでした。すいませんでした」
と、あやまったうえで
「……まさか『あれ』を手にするためにホウイチくんをつかおうとするものが出るとは、思ってもいませんでした」




