アチラのお医者さんと地下決戦21
帰り道、地下鉄の引き込み線のアカカガチの住みかに寄ると、先にもどった彼は、すでにひさごの酒精を吸ってぐでんぐでんに酔っぱらっていた。
たすけに来てくれたお礼をぼくが言うと
「おう。あんなもん、朝飯前よ。また、いつでも呼べぇ———ウィッ」
と、きげんよく言ってくれたけど、地上に上がったら、さすがにもう呼ぶ機会はないと思う。(上であんな暴れられたらこまるもの)
もちろん口では「ありがとう」と言っておいた。
地下鉄かむの駅の6番出口を出ると、時刻はもう夕方になっていた。
沈みかけてはいるけど、それでもやっぱりお日さまが見えるとホッとした。
ヨウコちゃんやハインリッヒ、それにジョセフィーヌさんとはそこで別れた。
みんなにお礼……特にヨウコちゃんに「来てくれてありがとう」と頭を下げると
「そんなのはいらない」とすげなく返された。
「それより、今後あたしの目をはなれたところでこんな危険なことがないよう、一度こっきり会議しましょう」
冷ややかに宣言された。
そんな、保護者がこどもの目を離しちゃいけないみたいなこと……
「いいわね」
「はい」
いいえ、と言う勇気はぼくにはなかった。
そして、ぼくとジェームスは、のんのん先生がコーポまぼろしにもどるのについていった。
約束どおり、先生をヨシノさんのところにつれかえらないといけない。
診療所にもどる道すがら、のんのん先生はひどく緊張して、落ち着かない様子だった。
「……ヨシノさんには、どう言ったものですかねぇ?」
まるで、悪いことをして先生に呼び出された生徒みたいだ。
「ふつうに『ただいま、留守番ありがとう』でいいんじゃないですか」
ぼくが言うと
「そうですか?……いや、なにかおみやげとかいりませんかね」
「いらないと思いますよ」
ぼくが言うのもなんだけど、こういうときはモノにたよっちゃいけないと思う。
そんな、どうにもならないことを言いあっているうちにコーポまぼろしについた。




