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あやしの診療所―のんのん先生とぼく―  作者: みどりりゅう


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アチラのお医者さんと地下決戦18

 いっぽうネズミと、ゴブリン・エルフ・ドワーフそして猫との戦いも終盤を迎えていた。


 その中心にいるのは、二匹の猫だ。


「——セバス!」

 猫の王・ハインリッヒは雑兵ざっぴょうネズミの首をかじり投げながら、いとこの黄金猫に向かって


「下っ端はおれにまかせろ!おまえは『あいつ』の始末をつけてこい!」

 鼻先で、一段高い輿こしに陣取った大きな三つ頭のネズミをさす。


「まかせたぞ」


 王のことばに、黄金猫は目を見開きひげをふるわせると

「——王命、うけたまわった!」

 以前に逃した相手めがけて飛びかかった。



「「「チュチュチュチュゥッ!」」」


 三つ首がそれぞれ吐き出すのは、毒気をおびたガスらしい。

 敵味方なく吐き散らすものだから、まわりの部下ネズミたちのほうがバタバタ倒れていく。


「ニャゴァッ!」

 セバスチャンはそれを機敏によけながら、得意の雷光攻撃を浴びせる。


 そこからは二匹のけものが毒けむりのなか、雷光きらめかせおらぶ、

すさまじい戦いがくりひろげられた。

 この二匹の争いに、他のネズミたちは関わることができなかった。そんな邪魔だてしようとするものたちはすべて、猫の王・ハインリッヒの鋭い爪になぎ飛ばされたからだ。


 雷撃によって一つ、そしてまた一つとネズミの頭をつぶしていったセバスチャンは、最後には自ら飛びかかると、その牙をのこった真ん中の頭に突き立てネズミの王をしとめた。


「——ニャゴ、ニャゴ、ニャゴァッ!!」


 ……このたたかいの後遺症で、セバスチャンは左耳を失い後ろ右足を引きずることになった。


 実際のところ、ハインリッヒが協力すればここまでのけがを負うことなく早く勝負がついていただろう。

 しかし、それではセバスチャンのオスがたたない。

 一匹で強力な敵に向かい合いしとめたことで、ドーピングの件で不安定だった彼の猫社会での立場がたしかなものになったのだ。


「自分が手を出したくなるのをグッとこらえて、部下のはたらきをだまって見守るのも上に立つ者の仕事です」


 と後でのんのん先生が言っていたけど、そんなことが実際にできるあの猫の王は、やはりたいしたものだと思う。

挿絵(By みてみん)


「——やむを得ん!退け!退け!」

 王がいなくなったことで最高指揮権者になったのだろう、ふたつ首のネズミが撤退を指示する。


 そして、アカカガチのしめつけに大モグラも穴を掘って地下に逃げこんだ。


 つまり、ゴブリンたちは……勝った!

 ぼくも、みんなのおかげで無傷で生き残ることができた、けど……。


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