アチラのお医者さんと地下決戦16
心の声で問いかけてくるアカカガチに、ぼくが
「「そのモグラ、なんとかできる?」」
心で返すと、伝わったらしい。
自分とおんなじぐらい大きいケモノを見て
「なんだ?『あいつ』を裏切ったモグラ野郎か?呪われた恥知らずが!てめえなんざ死ぬまで冬眠してろ、バカタレ!」
「——ギギウッ!」
モグラと蛇の激突がはじまった。
前に見た怪心尼と鵺郎博士の姉弟化物対決も迫力あったけど、今回の方がぐんとスケールが大きいや!
「そうですね。前見たのがサンダ対ガイラだとしたら、今度のはゴジラ対アンギラスぐらいですかね」
古い怪獣映画でたとえられてもわからないよ。
とにかく大きいから、ひとつひとつのアクションがまわりに対する影響が大きすぎる。
「「アカカガチ、みんなをつぶさないように場所ずらして!」」
「めんどくせぇな」
とかなんとか言いながら、大蛇はモグラをしめつけ戦場から引きずってくれる。
おかげで、ふつうサイズの戦いに専念できるよ。
いま、こっちはこっちでそれぞれクライマックスを迎えているんだから!
右手ではニセ女王……モドキアリに、ハガネアリ姫が挑んでいる。
他のハタラキアリはいっさい動かず、その決闘をながめている。どちらが自分たちの本物の女王なのか、見極める気なのだ。
「——コシャクな小娘が!とっととあたしにタカラをおよこし!」
大きな体で威嚇し前肢をふりまわすモドキに対して、
姫は
「ニセモノに、そんなことを言われる筋合いは無くてよ!」
羽根をつかい飛びながらよける。
しかし、大きな前肢にひっかかってはじき飛ばされる。
危ない!いくらなんでも体の大きさに差がありすぎるよ!
それに、まだ若い姫アリの皮膚は薄いから、攻撃してもぶあついモドキアリの外殻に弾かれちゃう。
「……いや。あの羽蟻は、なにかを狙ってるわね」
ぼくのまわりに近づくネズミを松風でなぎはらいながら、ヨウコちゃんが解説してくれる。
「あれは、ワンチャンスに自分の命を賭けているものの目よ」
そんな一流武芸者の分析は、正しかった。
巨大な相手になぶられているように見えた一瞬のスキをついて、姫アリが
ガブリ!
モドキアリの後頭部……首筋に、そのするどい大顎を突き立てたのだ。




